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ゴリラズ伝説

ライズ・オブ・ジ・オーガを趣味で訳しているブログ

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ラッセル・ホブス: 眠れる巨人の目覚め ①

ラッセル: 頭の上にふくろがかぶさって来たのが、マードックとの本当に初めての出会いだ。マードックははっきりしない50年代のレコードを探してて、ええと…俺はそれを探しに行った。俺は、ロンドンのソーホーエリアの、ビッグリックブラックレコード屋の一角の奥で働いてた。一瞬彼に背を向けたその時、俺は頭に大袋をかぶせられ店の外に放り出された。自分がコングスタジオにいて、マードック・ニカルスは敵だということがわかるまで、袋は外されなかった。だが、俺に演奏してみせた彼の音楽は、俺をそこに留めるのに十分だった。

アメリカのヒップホップハードマン、ラッセル・ホブスを加えよう。1975年6月3日、ニューヨークはブルックリン生まれのラッセルは、周りの尊敬に値するものによって、性格も言葉遣いもよくきちんと育てられた。2Dがルックス、マードックが頭脳だとしたら、ラッセルはまさに心である。マードックと2Dが音楽に没頭していた頃、ラッセルのやつはすでにミュージシャンであり、そのサウンドの知識は世界中に及んだ。

しかしながら、ラッセル・ホブスの周りにはいつも災難がついて回っていた。

マードック: 俺はこのヒップホップの巨匠ホブス、死んだ友人の霊に取り憑かれているひとりのリズムの王について、聞いてはいた。さあ、どれくらい絞り取れるだろう? そう、全てだ! ヒップホップ、アンデッド、ラップ精神、強制退去、衝撃的なドラマーの、全てを合わせたひとつの巨額な王家の小切手だ。いいや、二度目にラッセル・ホブスについて耳にした時には、俺の中ではもう奴は俺のバンドメンバーだった。例え本人がどう思おうと…

ある夜友人が全員突然走行中の車から撃たれた後、ラッセルは安全のためにイギリスに送られていた。彼は深くゆっくりとした東海岸口調で詳しく話す。

ラッセル: いまだにとても鮮明だ。俺たちの背後に回ってくる車の音。俺と友達はセブンイレブンの外に駐車してて、ひどい雨だった。俺たちは自分たちの仕事が嫌だったんだよ。そのハンヴィー…大きく黒いハンヴィーは、俺たちの車の後ろを這い回ってるようだったんだが…そして俺たちはすぐにその騒ぎに気付いた…

2D: 続けて! それで何が起こったの?

マードックが2Dを見やり、目をぎょろつかせた。2Dはこの話を50~60回聞いており、そのことをマードックは知っている。マードックは重たい電話帳を投げて2Dの後頭部に直撃させた。

マードック: おい! レインマンよぅ! いい加減覚えてこうぜ!

ラッセルにもう一度この回想を繰り返させることは、診療時間を飽き飽きしながら座っているのと同じことだった。

ラッセル: ギャングだった。ひとりを除いた全員が赤い覆面をつけた奴らでトラックはいっぱいだった。そのひとりのフードは黒く、顔は完全に闇に紛れていた。銃身の先に気付いた時には、もうそれは窓を突き破っていた。発砲し、その場を照らしたウージーの炎は夜空を光らせた。俺の友人のデルはあっという間に死んでしまい、他の友人も…俺から離れていた友人全員も死んでしまった。どういうわけか、俺にだけ全く当たらなかったんだ…

2D: 不思議だね。

マードック: お前は、俺たちに起こった多くの不思議なことが、事実だということを知ってるだろうがよ、このまぬけ。

ラッセル: トラックの床に倒れているところから、黒覆面の顔を見ることができたんだが…それは死そのものだった。死神。そのイメージは永遠に俺につきまとうだろう。

マードック: へぇ…すげぇな。

ラッセル: その瞬間が、そいつを目にした初めての瞬間だよ。

マードック: 伝記に残そうぜ、ラス。

2D: え…これ俺たちの伝記だと思ってた…

ラッセル: その時すぐに、死んだ友人の精神…幽霊の全てが、吸い込まれるように俺の体の中に入ってきた。シーツが掃除機に吸い込まれるみたいに。バン! バン! シュゥゥ!! バン! 真っ直ぐ俺の中に。

こうして取り憑かれる過程で、ラッセルの目は永久的に白く変わった。また、ラッセルに、優れた音楽の技術、悪魔の世界と遭遇した後にラッセルが作ってしまったくだんの友人、全ての音楽の最高権力者も、ひとりの男の中にもたらしてしまった。

マードック: で、俺はラスを元に引きずり戻した――

ラッセル: デル。彼は俺の真のソウルメイト、友達、兄弟だった。彼が殺された時、彼の精神を俺の中に取り込んだ。彼は、「クリント・イーストウッド」に現れている、幽霊ラッパーになった。だが俺はいつだって自分勝手な幽霊、悪魔の亡霊達の避難所だった…

マードック: なんていうか、ラッセル、それは多分お前が差し出した「土地」の、空きの大きさのせいだ。

ラッセル: 俺がちょうど…その周波数の振動だと思える、それ以上だと思うんだ。

マードック: なんだと?

ラッセル: 俺は、ザビエル学校という、ニューヨークにある若き成功者のためのプライベートスクールに、威張って通っていたものだが、卒業生の何人かが恐ろしい暴力を受けるという事件の後、教職員の長によってそこから移された。その時の俺は気付いていなかったが、俺はすでに悪魔に乗り移られていて、大きくなってもそのままだった。大学寮でのある夜、明らかに体が2倍にまで大きくなり暴れ続け、子どもを何人かつまみあげ、人形のように放り投げた。学校のホールに血で殴り書きされた「ラッセル・ホブス参上」というサインを見ていなかったら、それが俺だとは信じられなかった。それは間違いなく俺の筆跡だった。

マードックは頭を振っている。

マードック: お前はそういう頭のおかしい奴なんだよ、ホブス、だろ?

ラッセル: 少しは黙ってろよマッヅ、しまいにゃ殴るぞ、ブルックリン式でな。(ひと息ついて)とにかく。俺は学校から追い出されたが、取り憑かれていることと不安で俺は昏睡状態に陥った。俺は、メリン神父が俺の魂から魔を払ってくれるまで、大体4年間も意識がなかった。そうやって俺は今ここにいるんだ。

最後には悪魔は倒され、ラッセルは昏睡状態の4年後にやってきた。あいにく、前の学校は彼を戻らせようとはしなかったが。

ラッセル: そして俺はブルックリン高校へ行くことになり、新しい仲間に出会った。そいつらはストリートミュージシャンやラッパー、DJ、MCだった。俺は急いで多くを学んだ。ヒップホップは俺の命、魂を救った…

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1997年8月15日 「D‐デイ」

マードック: 新しい音楽装置、新しいシンガー、新しいバンド。これが俺に必要なものだ。俺はいい歌とデモを大量に持ってた。それらがチャートをかき乱せることがわかっていた! だがどんな歌もそれらを演奏する道具と同じだけの良さにしかならないってこともわかっていた。だから俺はキラーバンドを組むことにした。それが大成功しなけりゃ無駄だった。俺はまとめて簡単なやり方で突っ込むことにした。車ごと店に突っ込み、楽器を強奪、俺達のやり方をチャートにぶつける。やり放題さ、だろ?

そうしてスチューとマードックの世界が衝突したのは、スチューが土曜日の担当としてノームおじさんのオルガン専門店で働いている時だった。それもトップスピードで文字通りに…

マードック: 俺と使えないガタガタの歯の仲間は、時は満ちたとした。俺達がするのは、車を盗んで街をぶっ飛ばし、ちょっとばかしスピードを乗せてから、ラムレイドばりにミュージックショップをぶち破る!! その方が俺たちは物をぶっ壊し、タダで全部の最新機器を得て、ばか笑いできるだろ? 車が2Dの顔面に乗り付けたという事実はただのおまけだったわけだ。

2D: その日を鮮明に覚えてるよ。俺は角の後ろに立ってて、まぁ、店のスペースの中で目立ってた。恐らく3時間かそこらその場所にいたね。ただ立ってただけで。

マードック: ばかみたいにな。

2D: 突然、マードックがボクスホールのアストラで建物の壁を突き破って来て、それがバンパーから俺の側頭にぶつかって来た。

マードック: ハッピーデイ! …それがお前の片目がすっぽ抜けた時だろ?

2D: ああ。ひとつめね。抜けたんじゃなくて、奥に押されたんだよ。損傷して。はぁ、痛かった。

盗んだボクスホールアストラを運転し、建物を貫通して直接スチューポットに突っ込んだことで、マードックはスチューポットの左目に回復不能の怪我を負わせ、さらに彼を重いショック状態に陥れた。

マードック: 一時的に植物状態になっただけさ。もし俺がそんなに楽しんでなかったら、十中八九サツに連れ出されただろうね。

マードックは逮捕され、「30,000時間の社会貢献、さらに、毎週10時間の植物状態のスチューポットの看病」を科された。

マードック: イギリス司法制度万歳ってな? 信じられるか! この俺にお前の面倒を見ろと! だが、それはちょっとした枷だったがそのセッションはかなりおもしろいものだった。お前は覚えてねぇだろうがな。お前はまじで昏睡状態のいかれた野郎だった。セメントの袋の世話みてぇだった。

決められた時間に押し込みながらする、マードックの社会における介護サービスと、聞こえず、話せず、見えないスチュアート・ポットへの虐待とは、大体のところうまく機能していた。

蹴る、叩く、殴る、引きずる、必殺の一撃をくらわす、ぱちんこで打つ…強硬症の子どもにはなにも影響しないようだった。そのとんでもない事件が起こるまでは。

マードック: 俺たちはノッティンガムの駐車場にいて、すげぇイカした360度ターンの全工程を成功させていた。俺は堅苦しい焼け跡を残し、タイヤは煙を上げていた。周りに立っていた女の子達はまじで感動してた。だから俺はもっとやってやろうと思って、ブレーキから足をのけてグランドフィナーレへと向かった。恐らく時速90マイルくらいに達してたな、フロントガラスから2Dが放り出された時は。2Dは500ヤードくらい飛んで歩道の縁に顔から落ちた。あー…うわああ!

2D: ほんと?

マードック: まじだ。これがお前のふたつめの目がなくなった時だ。お前は時速70マイルでフロントガラスから飛び出し、もう一度頭をぶつけた。大体半マイルくらい顔で滑り、だがそうしてお前は戻ってきた! 驚いたさ!

この事故の衝撃は2Dを麻痺の状態からよみがえらせ、世界が見たことのない最高のフロントマンのひとりを我々にもたらした。

マードック: 俺に背を向けながらごくゆっくりと立ち上がり、お前の観ていた映画のゾンビのひとりのようにごくゆっくり辺りを見回し、そして…なんとそこには目がなかった! ただの暗い眼孔…空洞が見つめた。

2D: かなり怖かっただろうね。

マードック: 違うなお前。俺は見たんだ! すげぇことだ! 青い髪で黒い目の神を! 女の子達は取り乱した。俺には手に入れたことがわかった。お前はまだ少し精神異常だったが、俺はフロントマンを手に入れたんだ! めちゃくちゃで、半分向こうを向いているにも関わらず、俺は女の子達がそのかわいい外見に夢中になるのがわかったし、だからゴリラズのシンガーにしてやった!

しないわけないでしょう? マードックの前に立つ彼は、細く、とげとげしく、死相のように青白く、ブラックホールの目をした「若き愛の神」だった。8級のキーボードの技術を持つ薬漬けの死体のようなぎこちなさと不器用さ。完璧だ!

マードックは、新たに復活したスチューポット(まだ精神的に不完全だったが)を、彼が今いじっている頭のふたつの穴(2 Dents)、マードックが引き起こした2度の自動車事故で残された怪我に敬意を表して「2D」と名を改め、キーボードとボーカルとしてグループに迎えた。

マードック: 今度はドラマーが必要だ…

その通り。素敵な一行の中堅。次はソーホーでございます。

マードック: 本当は俺の方が2Dよりいい声なんだがな。

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12D3: 郊外で彼らは怯える

2D: 俺は当時、音楽より映画にハマってた。『Meantime』、『Scum』、『Made in Britain』。わかるかな? しかも俺はゾンビ映画の大ファンなんだ。『ゾンビ』、『死霊のはらわた』、『Zombie Flesh Eaters』。特に、スプラッタ映画の巨匠、ルチオ・フルチにハマった。『Zombie』と『The Gates Of Hell』も本当に好き。あとジョージ・ロメロの映画もすっごい! クローネンバーグの『ラビッド』と『ザ・ブルード』は好きだった。アベル・フェラーラの『ドリラー・キラー』はまた別のかっこよさがある! 『エクソシスト』と『悪魔のいけにえ』もいい。すごく怖い。あ、それと『Cannibal Massacre』も。でもいまだに『ゾンビ』が一番かな。何がなのかわかんないけど、ゾンビの何かがまじでキモい! ゾンビの動きはほんとにゆっくりなんだけど捕まりそうになる! まじでビビるよ、でもだから観ちゃうんだと思う。

スチューポット(もしくは本名でスチュアート・ポット)は、1978年5月23日、デイヴィッドとレイチェルの息子として生まれた。ポット夫妻はクローリー・ニュー・タウン(あるいはクロウ・リア…サクソン人移民独自のネーミングで「烏合を追い払う」という意味である)の、居心地のいい普通の家に暮らしていた。

スチュアートは、少し独り言を言うが、品のある行儀よい少年だった。少し神経質な人達は、若きスチュアート・ポットは多分おつむが弱いだけだろうと、なんとかして捉えていた。彼の教育は、彼自身同様、大体平凡で普通だった。彼とマードックは、共に午年生まれであること以外に、隔てられた生まれと暮らしからめぐり合うことはなかった。

2D: 俺の本当の名前がスチュアート・タスポットとかなんとかだっていう噂が広まってることは知ってるけど、違うよ。ポットだよ。スチュアート・ポット。

デイヴィッド・ポット: 実は、元々は「タスポット」だったんだが、スチュアートが生まれた頃、「ポット」に縮めようかと思う程のからかいの人生を耐えていたんだ。だが深いところで私もスチューもいまだにばかなポット親子さ。

スチューポットが言うことに関わらず、映画と並行して、音楽は彼の人生の大部分をなした。デイヴィッドとレイチェルはふたりとも、うるさいBGMのザ・ジャム、スペシャルズ、ザ・クラッシュ、ワイヤー、バズコックスに合わせて自分の部屋を跳び回っている、興奮しやすい10歳のスチュアートを思い返した。昔彼が作ったテープからは、彼がまたジェイソン・ドノヴァンやファイブ・スター、シャカタク、そしてヒューマン・リーグ(スチューが最も好きなバンド)のファンでもあることがわかる。彼はまた、自身のホーナーを使い、彼が崇拝するオーガスタス・パブロ様式で、シンプルだが印象深いメロディーを巧みに奏でるとても熱心なメロディカ奏者でもある。

2D: そうそう! それについては全部忘れちゃったけど。

スチュアートが11歳だった時、木から落ちて頭を打ち、全ての体毛を完全に失った。やっとまた生えてきた時、その色は輝くような空の青だった。

マードック: 下もか?

2Dはきまり悪そうに下を見て頭を掻いている。

父親のデイヴィッドは遊園地の乗り物の機械工で、全てのそういった電子機器の修理工だ。母親は巨乳の看護師で、スチュアートが持っているひどい偏頭痛に、鎮痛剤をずっと与えていたのは彼女である。この頭痛は、数年後にスチュアートとマードックが共に生活するハメになる事故の後、より一層ひどくなった。

スチュアート・ポットは聖ウィルフリッド大学(偶然にも、クモをベースとした、地元の元祖ゴシックバンド、ザ・キュアーのメンバーが通ったのと同じ学校)を、志望理由がなく、明らかに学力が足りていないにも関わらず、しかし正当な成績を持って卒業できた。

2D: うーんと、みんな知ってると思うけど、「少しの知識はかえってすばらしい」。俺は、卒業後にやりたいことについてなんか、まじで考えたことなかったけどさ。

長い沈黙が続く。

2D: まじで本当に、昔覚えてることについてなんにも考えたことないよ。

驚きました。

2D: 俺はストームチェイサーになりたかった時期を通り過ぎた後、好きなテレビや竜巻、資料に続いて、たくさんの動画を撮った。キーボードと少しの電子部品でごちゃごちゃしているのが好きだった。父さんがいくつかの道具をカスタマイズするのを手伝ってくれたおかげで、俺は新しいキーボードの音と資料を作ることができた。俺たちは本当に、スタイロフォンやモーグ、古いドラムマシーン、音の鳴る電子機器ならなんでも使った。俺はすごくかっこいいと思うカシオのVL-toneを持ってた。ちょっと落ち着くノイズの中で演奏することにひたすらハマってた。もしよかったら、数年前に作ったテープを聞かせてあげられるよ。

いえ、大丈夫です。

2D: 絵を描くことにもハマってて、落書きや画材をいじくり回した。ある点で俺はバンクシーの奴みたいな破壊者になりたかったんだと思う。それだけじゃなく、サブティオ(サッカーゲーム)の変わったゲームや土曜日の仕事にも、本当に力を尽くそうと思う目的はなかった。俺は土曜日だけ仕事をしてて、ユーロ96のサブティオセットを買うのに足りる賃金に昇給させることができていた。それにはユーロ96のボールが全部と、囲いとプレーヤーと、USA94のセットの箱やイタリア90の箱みたいなかっこいい箱がついていた。彼らがすること以外は……

一方、ストークの裏でマードックは、悪友・悪漢・悪党のギャングを集める陰多き者と共に、男にとってばかげていることの全てに陥っていた。行き詰まりの仕事と望みのない予行の、退屈な繰り返しに飽き、彼は「エンジンをかけて」、基本計画を実行に移す決意をした…

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マードック・ニカルス-「火種」 ②

人々の欠点に光を当てるという彼の才能を磨くことは、我々の恐れ知らずのマードックに新たな自信を与えた。マードックの次の時代であるティーン時代の多くは、普通はストロングボウ・サイダーをがぶ飲みしエアピストルを窓の外に打ちながらの、盗み、車の盗難・暴走、動物虐待、詐欺、放火など自慢できる大騒動に費やされた。日中のハードな不良活動の後、夕方は仲間達の家を渡り歩いてレコードを聴き、のんびりと過ごした。とりわけ、ブラック・サバスの深く、濃く、甘美な成功に気付いたのはこの場所だった。メタルバンドのザ・ブラミーはマードックにとって、闇を切り裂き先を指し示して輝く、第二の神だった。

マードックは、膿み、腐り、病んだ村の外側の、金色に輝く未来をイメージし始めた。

マードック: ブラック・サバスのベストアルバム『ウィ・ソールド・アワ・ソウル・フォー・ロックンロール』。ああそうだ、あれが俺の頭をまさにひっくり返した。実際、奴らは俺の、古きサタニズム・ゲームに賭ける投資のひとつだった。それらと、アレイスター・クロウリー、アントン・ラヴェイ、すげぇ巧妙なA.C.M.Eの「ドゥ・イット・ユアセルフ」。がらくた市で買った悪魔崇拝道具。だが一番は? そら、リーフレットを手渡してアーンデール・センターをうろつく奴がいた。それで俺は、最初に目にしたものが「地球上の富」の全て、「性的貪欲」なもの、「アルコール過多」になる機会と対になるものだと思った。16歳になり、それは計画を企てている最中の男にとってすごく楽しいことだった。そう、俺がやってみたように、わかるだろ? それは手袋のようにフィットした。
 ヘビーメタルと悪魔崇拝は俺の一番の趣味になった。兄弟のハンニバルのテイストはもっとダブとパンクがベースになっていたが、俺は万事没頭した。実際、俺にとってダブレゲェの世界を次第に開いていったのはザ・クラッシュへの熱だった。だが俺の最初の真実の愛はいつだってヘヴィ・メタルだ。愛しく、親しく、甘く、邪悪なメタル。兄弟もそれが好きだったとは全く思わないが。

2度目、3度目とマードックの鼻を折ったのがハンニバル・ニカルスだ。ハンニバルのプレーヤーでディオのアルバム『ウィ・ロック』を聴いたからだった。

マードック: 奴は俺をたくさんのいい音楽にぶち込んだ。奴は今は投獄中だが…あー…タイヤのホイールを盗んだか何かで。

そう遠くかからず、マードックはたったひとつだけの正当な資格―「反社会的人類学国際学士号」を残してサッズウォース校を出された。

マードック: ああ、俺は「余所の文化」の行動パターンやコミュニケーションの方法、文化的習慣を、かなり詳細に学んだ。それからそれを馬鹿にしてやった。俺は完全勝利と共にその試験に合格した。

しかしながら、ストーク・オン・トレント6年制大学のハロウド・ホールズは決して父親を招かなかった。

マードック: まじないと鋭い思考力と音楽熱のコンビネーションは、全て同じ方向性を俺に示した。俺はすぐに、ワインの海へ出航し世界を揺らし転がすミュージシャンのスターとして人生を費やす決意をした。俺は封印を解かれた魔神だった! 頭脳とまじないと自信とカリスマを武器に…止められなかった!
 契約に封をし、下の大男と共に計画に取りかかった。俺のさだめを感じるか? やっぱり俺はチャンネルを乗っ取るものを持っていたんだが、それは魔王の小さなエレベーターに乗せても全く傷つけられねぇ。だから俺たちはある取り引きをしに来たんだ。

ある契約をするため、マードックはミドルネームを書類手続きにおいてアルフォンスからファウストに改名した。そして引き換えに悪魔のベース、「エルディアブロ」を手に入れた。

マードック: すばらしい。本当にいい音だ!

それはマードック・ニカルスが成功の杯から飲む前から度々あったため、進路が今やはっきりしているにも関わらず、二者間の契約はいくつかの期間の弁護士の間で明らかに拒否された。マードックは父親の家に住むのに不可欠な家賃を支払うため薄給な仕事を耐え抜いた。

マードック: あー…墓掘人、スープ屋、テレセールス、サンタクロースのバイト、教会の屋根の鉛を盗むこと…

それは実際、仕事ではないのでは…。

マードック: いや、きつい仕事さ。まぁどんな方法にせよ金が必要だったんだ。

どれくらい酷いことをしたんですか?

マードック: そうだな、俺は一度、大事業家のサー・アラン・シュガーに性行為をすることについて考えた。100ポンドは見込めた。だが直前になって、「くそっ もっとうまい方法があるだろ…」と考え直した。その時はまだ奴はただ「アラン」と呼ばれていた。奴はいまだに俺に「サー」と呼ばせようとしてるがな。

本当に?

マードック: ああ。この話は全て本物さ。

その数年間ずっと、マードックは、どこにも行けない、多様なラインナップでたくさんのバンドを作った。それらの中には、悲しいことに、ぼんやりして頭の悪いキーボードとマードックのカラスが絞め殺されたような歌とを合わせることに何の意味もない、酷くヘタクソなニューロマンティックバンド、パチュリー・クラークもあった。彼らは二度と組むことはなかった。

マードック: 何にせよ、そうさ。俺はかねがねいつか世界の王になるってことがわかってたが、それは始めてのバンドでのことじゃなかった。大きな契約だからな。先を読み続けなきゃ。

スターを成功させるための上手く行かない試みは数年間続いた。キッスンメイクアップ、ブールワーカー、クリムゾン・バックドラフト、マトリー・デュード、ザ・バーニング・センセーションズ、ザ・スチューピッド・ネーム・ギャング、デュランゴ95、トゥーズ・ア・クラウド…と、恥のリストは続いて行く。

マードック: 最終的に、俺は時間を無駄にしていたことに気付いた…「豚に真珠」だったのさ。俺の声は真のプロ、スペシャリストのためのものだ。広い聴衆へ向けて、俺の作曲技術の素晴らしい才能を伝えるには、俺はもっと…型にはまったヴォーカルをみつけなけりゃならなかった…

歌うことのできる誰かを。

マードック: そう、その通りだ。現実問題は1997年のチャートがふざけたものだったことだ。それがチャートに上がり人々にヒットしたというなら、そいつらはちゃんとした音楽を知らねぇんだ。俺はトップ40だけでなく、イギリスだけじゃなく、音楽業界だけじゃなく、世界の全てに向けての計画をした。総てだ、いいか? 冗談じゃないぞ、もう少し待ってくれ。この話はもっともっとよくなる、そして物語とセットになるんだ、なぁ!

もしマードックが本当にその夢を実現し、汚く、不快で、腐った、ゴミに満ちた、悪臭放つ肥溜のストーク・オン・トレントから逃げ出したなら、違う段階で基本計画を進めなければならない。それは彼の才能に見合ったバンドを作ることを意味した。

一方、イギリス、クローリー・ニュー・タウンでは、とても、とても優れたシンガーが頭角を現し始めていた…

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マードック・ニカルス-「火種」 ①

マードック・ニカルスは、1966年6月6日、ストーク・オン・トレントの悪評高い区に生まれた。正確な場所はわかっていないが、マードックの母親は「病人」や「ちょっとお金のない人」や「ちょっと毎日することがない人」のための社会復帰施設である、ベルファゴール保養地の住宅にまだいるうちに彼を産んだとささやかれていた。裏事情が何にせよ、赤ん坊のマードックは、極悪な父親の人気のない家のドアステップの上にみつけられた。

マードック・ニカルス: 奇妙なことに、みんな俺の親父が誰かは知ってたんだが、母親を知ってるやつはただのひとりもいなかった。かなりはっきりとした気配がいくつもあったにも関わらずな。俺は、セバスチャン・ニカルスが酒場の会合のひとつから帰宅した時に、玄関の前でひとりの赤ん坊としてただみつけられただけだった。

父親セバスチャン・ジャコブ・ニカルス(あるいはジャコブ・セバスチャン・ニカルス)は、悪名高い大酒飲みで、賭博師で、女たらしで、ろくでなしであり、そのいかがわしい悪行の数々はビル・サイクスすら凌いでいた。彼はその土地の子どもをさらっていくと思われていたし、だらしない人生のほとんどを、なんとかしていかなる形態の仕事も避けることに費やしていた。

めでたくも、運命の夜にセバスチャンが酒場から帰った時、汚れた真っ黒のカラスがマードックのおくるみにとまっていた。そのおくるみが彼に少なくともいくつか、内包する情報の手がかりを与えられればよったのだが…。セバスチャンは、脂っぽく、ガァガァ鳴いているカラスを追い払い、中の雑巾のような包みを取り上げた。その贈り物を開けた時の、彼の泥酔した顔に浮かんだ失望は想像できるだろう。

マードック: もしその時eBayができていたら、奴はオンラインであっという間に俺を売ってただろうな。奴が俺を学校に厄介払いするまでの数年間、俺は奴の酔っぱらった不快な行動を耐えなければならなかった。そして学校は親父に耐えるのと同じくらい嫌だった。俺はよくなぜ素行がそんなに悪いのか聞かれたが、【解放されたどうしようもない腰】を目にしたら明白だ。「人間は人間に対して惨めさを伝える」、な。実際、「これも詩であれ」は殺人者の歌だった。残念なことにフィリップ・ラーキンは成功図に不可欠な「これも唄であれ」を書けなかったんだ。これは最初の45秒に入る必要があるぞ! いや、Radio1は放送しないか。

7歳からマードックはサッズウォース学校に通っていたが、初日からよく授業中に廊下で見つけれた。担任であるグラバードラックス先生は、サッズウォース学校のだらしない愛すべき生徒として、めいっぱいの暖かさを持ってマードックを心に留めた。

グラバードラックス氏: マードック・ニカルス? いや、彼じゃない…彼のことは嫌いだった。彼はひどい生徒だった―彼は教室内では延々と続く私語と無意味で不気味な冗談で他の生徒の気を散らしていたが、それよりも教室の外で壁にもたれていることが多かった。例え、彼が物事を知るための面識を得る、カリスマ性と素晴らしい特技を持っていたとして、私はそれを認めなければならないのだが…えー…それは「マードック・ニカルスのやり方」だ。彼は確かに目立っていた、だが結局しばしばウイスキーの臭いをさせてやってくる愚かなばか者だったのだ。

マードック: 薬の臭いをさせてやってくるよりいいだろ。

トニー・チョッパー: ああ、俺はマードックを覚えてるよ。醜い小男だ。いつも洗っていない運動着のような不潔なにおいがした。俺は、彼の人生を惨めにすることがとても楽しかった。とはいえ、もし彼が成功すると知っていたら、私は恐らく演じたと思う、そう…少し違ったふうに。ほら、私は今42歳で、昨夜一晩ハッピーショッパーで棚を重ねることに費やしたが、それでどうなる?

マードックはチョッパーからたくさんのあだ名をもらった。「アーホック」「ちび」「不適格者」「憂い顔」「奇妙奇天烈」「おかっぱ」「塹壕足炎」「ゲイ貴族」「悪臭放つ馬糞の山」… 日々新作を加えてリストは続いていく。マードックという人間がついに作り上げられたのはいじめの長引いたこの期間のことであり、今の【伝説の潰れっ鼻】という、8か所の負傷のうち最初の負傷で、自分自身を確立したのであった。退屈な被害者であるマードックは、トニー・チョッパーに、鋭い機転ときつい毒舌の、止まらない避難を浴びせて反撃した。この遠慮なく押し寄せる避難はどんどん強まり、マードックの、トニー・チョッパーは「きっとクビになりゴミくずになるまで通りの角で呼び込みの歌を歌う仕事で終わる、場所の無駄遣いでしかない知恵遅れの邪魔な不用品」であるという宣言と共に最高潮に達した。

マードック: 酔ったバカが人生のより良い機会に立ったのさ。

バシッ!!! トニーの大きく太った拳がマードックの顔と接し、鼻を粉砕しニカルス少年をふっとばす。

やった!!! ついに! マードックは明らかにチョッパーの逆鱗を直撃し、チョッパーの無駄に厚い皮膚の皮を貫通した最後の侮辱は、彼を意思なく暴れ泣きわめく小山に変えるのに十分だった。鼻が血まみれにも関わらず、マードックは今まで彼に自分をなめさせていたことを知った…

マードックが学校から愉快にスキップで帰ったその日、骨折したが晴れやかな顔に血は流れ落ちていた。彼は自分の人生に立っていた。

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