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ゴリラズ伝説

ライズ・オブ・ジ・オーガを趣味で訳しているブログ

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クリント・イーストウッド

「行けパンク…俺の時代を映して」

「トゥモロー・カムズ・トゥデイ」のPVで予期される可能性を発揮し、ゴリラズは今、もっぱら今や根源になっている「クリント・イーストウッド」のPVでゴリラズの勝負を取り上げているプレミアリーグへ近付く準備をしていた。

彼らがそれから16週間以上を費やして制作したものは傑作に他ならなかった。

デイズド・アンド・コンフューズドの事務所での事件にも関わらず、彼らは先の相棒、ジェイミー・ヒューレットを再び借り受け、手元の仕事について話し合った。「どうやってゴリラズのPVの最も素晴らしい前例を創ろうか?」

マードック: 実のところ、俺たちが口を挟むタイプのことじゃまるでなかった。

初めのうち、ゴリラズは単純にパフォーマンスする部分を撮ることが重要であると提案した。これはかなり月並みな考えに聞こえた――マードックがコングスタジオの悪名知れ渡る幽霊の出る墓場で真夜中に射撃をしたいと漏らすまでは。

PV撮影はマードック・ニカルスがオッズを上げることですぐにバンドのプロモーションからチキンレースへとエスカレートした。眼に凶悪な光を浮かべて、マードックは漏れなく墓場でひと晩かけてバンドと撮影スタッフの両方に挑戦した。

マードック: 「お前たちが夜明けまで待っているなら続けられる。できる全てを映せ、長い夜になるぞ。」

2D: なんでそんな海賊風に言うのさ?

マードック(手のひらを上に向けて): もう少しおっかなそうに聞こえるかと思っただけだよ。

このPVはジェイミーによって、カメラの動き全てから照明やデザインまで失敗を許さない驚くほど緻密なストーリーボードで説明された。そしてバンドによって忠実に実演されていった。パッション・ピクチャーのチームはさらにCGの映像と効果を加えた。(コンピューターによるCGの役割。ええ、見たことがありません!) 「クリント・イーストウッド」のPVは、完成までの4ヶ月に、5,000枚を超える原画と25名の人員を要した。

マードック: おっと。見ろよ。アンドリューがおでましだ…

パッション・ピクチャーズのアンドリュー・ルヘマン: そうだな、「クリント・イーストウッド」は突破口だった。「トゥモロー・カムズ・トゥデイ」はみんなの目の前に踏み込む試作品だった。できるだけお金をかけないようにしよう、ちょっと市場を試してみよう、そうして「クリント・イーストウッド」は全てをふっとばしたって感じだった。私は『Mr.インクレディブル』を制作した偉大なる英雄、ブラッド・バーからメールを受け取った。それにはこう書いてあった――「素晴らしい、皆が2Dアニメーションは廃れ3Dアニメーションが台頭していると言う中、現代的で新鮮に見えるこの質と様式の2Dアニメーションを観ることはなんと素晴らしいことか――と、言うようなことを目にすることにはただただ勇気付けられる。」私たちはバンドの成功のためにできる全てのことをしたのだとわかった…勝ち残るために、私たちだけの質の高いデザインを凝らし、質の高い音楽を投入したからだ! 挑戦できるところまで昇り詰めたと感じたし、チームの努力を合わせた時、それは素晴らしい挑戦だった。そして、「クリント・イーストウッド」は私にとって大きな素晴らしき思い出となった。

マードック: わかるぜ。残りの世界が俺の視界全てを支配し始めるところだった。このPVはとても信じられねぇ!

2D: 今でもこの映像は俺の背筋を震わせるよ。全てを変えちゃったんだ。

ラッセル: ぜぇぇんぶだ。

黒地に赤のスプレーが、不吉な予感に至る『ドーン・オブ・ザ・デッド』を連想させるようにゴリラズのロゴを描く。

「生き残りを除く死体の全てが起き上がり殺しにくる。それらが殺した人々もまた、起き上がり殺し始める。」

既に我々はもはやカンザスにはいないことを知っている。ジェイミーもPVを60年代の西部劇風にするために、イントロに少しだけボーカルを加えることを2Dに頼んだ。ラッセルが激しくドラムを蹴る間に、マードックの深いしわがれ声のバリトンの笑い声がつんざく。おおおお、とてもすごく雄々しいですね。

比較的直線的なスタジオのセットでのオープニングでは、カメラの画面からはみ出ている床からせり上がるステージにゴリラズの4人が現れ、そうして互いに中へ外へ動き回るバンドの演出を与える。暗雲とゴーストラッパーの出現を引き金に、この素早い変化は、青いインクと黒いカラスの不気味に切り替わる映像へと変わる。我々は今、コングスタジオの墓場にゴリラズと共にいる。

次の3分間のコースの至る所で、我々は滑稽なあの世の彩色技術の容赦ない連続攻撃に直面し、サルのゾンビと地震と雷とラップをする幽霊と格闘技の出現を目撃する…

2D: 俺たちがそこでしたことは、まじで何とも言えないんだ。

ゴリラズの存在は墓地に埋葬された死なないゾンビの軍隊を目覚めさせた。大地が割れ、厚みのある毛深い腕が突き出し、脚の間のマードック自身を鷲掴む。

2D: マードック、地面から猿人が飛び出てきて君の玉を鷲掴んだこと覚えてる?

マードック: ああ、覚えてるさ。すごくよくな。そいつは俺の玉を強く握り潰し、俺は数週間喘ぎ声が止まらなかったんだ。

霊長類のゾンビはとつぜ…

マードック: 嘘じゃねぇぞ。メロンみてぇに腫れ上がっちまってよ。でけぇ紫のメロンだ。

霊長類のゾンビは突然、演奏に合わせてマイケル・ジャクソンの「スリラー」に出てくるグールのダンスを踊り始める。

無駄な野営地のゴリラである猿人の1体が、特徴ある振り付けの一部がいつも含まれている長年の「彼女の」役目を教えてくれた。ややかすれたニューヨーク・ユダヤなまりで、一軍のヘッドであるフローレンスはさらに次のように説明する。

フローレンス: マイケル・ジャクソンの「スリラー」のPVの模倣であるはずだと皆考えているが、娘と私は思い出せる限りの長い間この役割で踊り続けている。私たちは全ての「死なない猿人ゾンビの群れ」に、50年代への帰り道の合図を触れ回っていた。

どうでもいいですね。

ヌードルは不気味な墓場の襲撃者を、飛んでいる大きなチンパンジーにお見舞いする、素早く小気味よい顔面への蹴りをもって処理している。朝日の最初の欠片が到達することによって、夜の恐怖は全て次第に塵となって消えていく。

マードック: この墓地では奇妙なことが起こったと言っただろ。撮影をするにはすごく良い土地なんだが。

バンド発足以来、他の何よりも勇ましい「クリント・イーストウッド」という一連の動画は、待ったなしで全世界の人種に、ゴリラズの闇、栄光、活き活きした魅力を紹介した。これまでにした旅行の10年分より、ゴリラズの宣伝をすることの方が、地球を震わせ本物の地震を引き起こす程のインパクトがある。

もうひとつ、ジョン・オ・グローツの南の全てのクラブのダンスフロアにゴリラズを激しく植えつけた、エド・ケースとスウィーティ・アイリーによる気の利いた上手いガレージ・リミックスによっても成功のはしごを押し上げた。産業のなかにあるもうひとつの珍しさ、本当にクラブでヒットするリミックスとは実のところ、その誕生の確実性の結果である。

マードック: ゴリラズはスウィーティやエドにリミックスしてくれなんて頼んじゃいねぇんだ。ザ・ミドルロウ・クルーと名乗る曲刀を振り回す悪い海賊の下品な連中によって、マスターテープがコングから盗まれたんだ。

獲物を手に入れて、彼らはスタジオに引き上げ、リミックスし、それからゴリラズという一味の知識を公開した。

冷酷で極悪なギャングと切ることのできない相互関係を築いているマードックは、彼らの豪胆な行動力を称賛し、楽曲のリミックスを承認した。懸命な動きだ。リミックスが全てのクラブを湧き立たせるようおおいに扇動したことを特別に考慮すると、ゴリラズの表面上の不良という印象をさらに高め、オリジナルバージョンを手に入れられなかった観客にも届いた。このリミックスはそうして公式の「クリント・イーストウッド」のリリースに含まれるようになった。

エド・ケースのふたつのステップのガレージ・ミックスと共に、ゴリラズは、緑の谷のどんなに懐かしい郷愁やミルクティや縦縞のボート用ジャケットよりももっとイギリスの鼓動に合っているということを見せつけた。

2001年3月5日 「クリント・イーストウッド」シングルリリース

2001年3月11日 「クリント・イーストウッド」チャートに最高で3位をランキング

ポップカルチャーにおけるこの画期的な出来事は、14週間チャートに留まり、PVとCDの両方がイギリス、ヨーロッパ、及びアメリカで多数の賞を受賞していった。

ラッセル: みんなの考える普通からすると、これは本当にでかいCDだった。俺たちはイギリスだけで750,000枚くらいCDを売った。イギリスでのこの成功は、国際的には俺たちにとって全ての始まりに過ぎなかった。

このリリースと共に、ゴリラズは、1950年代より後のティーンカルチャーの誕生からバンドというものがしていないこと、つまりは子どもやティーンエイジャー、野性的なひと、熟達したひとも同様に引き寄せ、全てを包括し全てを魅惑するために管理・経営した。

いくらかジェネレーションギャップが縮まると、皆が鋭さと展開の速さと素早く切り替わるアニメーションを楽しんでいる間、音楽好き達は、酩酊状態を渡る気だるげな子守歌のボーカル、良き時代のラップの、いかした猫背のダブ・ボーイを掘り下げた。このコンビネーションは冒険的な展望と、解放された真の情熱を古い学校の様式に示した。

部外者の意見を言っているのではない。それは単純に独創性の外で、信頼と尊大さと親切なアプローチをもって皆を招待した。

現在のポップの情勢は、機械的なバンドの単純さと抗うつ薬の常習と、どこの馬の骨ともわからない作成途中の将来伝説になりうる全ての若い職人の偽物の魂との間につまらなさを閉じ込めているにも関わらず、誰かの芸術的な実現は、無能にも笑顔を作ることだけで表現できてしまう。

マードック: お前の痛みなんか関係ねぇ。俺を楽しませろ。さもなくば帰んな。

ある音楽産業の成長が停滞することに対する、人生における冷たく新鮮なひと呼吸だった。

ゴリラズは全ての競争に厳しく当たった。その上、世界をまたぐ国民もまたそう考えた。「クリント・イーストウッド」はイギリスのシングル曲が数年間成し得なかったことをした。

アメリカのチャートで的確に影響を与えた。


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現実と虚構の境目は音響装置にあり

2000年12月6日 デイズド・アンド・コンフューズド誌にて世界的メディアがデビュー

鞄の中の、彼らのデビューアルバムとPVの両方と共に、ゴリラズは紙媒体攻めという国際的なキャンペーンに次の戦艦を発射した。

情報誌のデイズド・アンド・コンフューズド誌は、レッド・ツェッペリンの…ええと…「幻惑されて(デイズド・アンド・コンフューズド)」にあやかって名付けられたことを元に純粋に選んでマードックが声をかけた最初の地点だった。一部を委任するための、ジェファーソン・ハック編集長の決断だった。

ジェファーソン・ハック: そうだな、スタジオ(コング)に降りて行って、音楽を聴き、本物の風景を背景にしてジェイミーがイラストを描いた場所で録っているファーストPVを観て、その音楽が好きになって、そして表紙にしましょうと思った。

マードック: 正解だ。

写真撮影のため、マードックがジャーナリストのロジャー・モートンも含んだバンドメンバーをボクスホールアストラに突っ込み、時速90マイルで進む道中で一時休憩を指示しようと決める前の初めのうちは、インタビューはコングスタジオで行われていた。マードックが道すがら、レディオヘッドやビリー・オーシャンを糾弾する、オアシスやリンプ・ビズキットからブリトニーやクリスティーナまで、こんにちの全ての他のバンドをこき下ろしていつものやり方から外れるのは、猛スピードに走っている間のことだった。マードックは「配管工のケツの方がまだファイブよりイケメンだろ」という宣言と共に締め括った。

特に外見は優れてもいなければ変わっているわけでもなく、創られたという点。ゴリラズは異なる地から来た異なるバンドだった。

写真は、東ロンドンはオールド・ストリートのデイズド・アンド・コンフューズドのオフィスで撮られたのだった。

撮影もまた、その騒ぎ無しには済まなかった…

ラッセル: 俺たちはジェイミー・ヒューレットに、スタイリングについて降りてきて手伝ってくれと言った。だがあんたが言ったように、ヒューレットは少々トラブルメーカーであることで知られていた。俺たちが帰った後、何が起きたかは知らないが、ジェファーソン・ハックはお幸せではなかった。

ジェファーソン・ハック: ジェイミーは私に、もし俺がしたいなら、もしラッセルが壁にバーガーをなすり付けたなら、もしマードックが部屋の向こう側にテレビを投げたなら、と訊いてきた。それから、ええと…私は本当にジェイミーが続けていることについて知らなかったもんで、十分な注意も払えなかった。でも翌朝私が入って行った時には、壁になすり付けられたバーガーがあり、部屋の向こう側に投げられたテレビがあって、私は大変遺憾だった。

しかしながら、モートンのゴリラズに対する印象は、目に見えて期待通りのようだった。

バンド間の持論の変わり映えしないつまらない長話の後、寝ている間に2Dの耳に火のついたたばこを刺そうと企んでいるマードックと共に、バンドはあくせくとアルバムを演奏した。最初の反応は良かった。ロジャーはこのアルバムを次のようにくくった。

「可能性のある要約であり取捨選択する新事実である種無しボンゴは、ポップに鎮魂と追悼を同時に反復演奏した。いいや、本当さ。『スロー・カントリー』は浮かべる。『トゥモロー・カムズ・トゥデイ』は踊り出す。『M1 A1』は懐古的虚無主義を分ける平坦な道を走る。ああ、まったくだ。再度録音した反響して鳴り響く、ゾンビを捕えているそれは、ニューヨークとキューバを経てクローリーからキングストンまで一線を画し、パンク・レゲェ・ポゴを奏でる間を綱渡りをする。」

「スヴェンガーリが取り憑いた黒魔術を操るベーシスト、鎮痛剤中毒でその人生には欠落があるボーカル、ヒップ・ホップの巨人ドラマー、たまごっちとロックが好きなギタリストという4人の組み合わせは、100万をもたらし、999,999回という誤った速度でスカンク・アナンシーに会える。ゴリラズのデビューは100万回に1回の例外だ。」

モートンが音楽を聴いたことに満足したマードックは、ゴリラズが「最高だ。他に誰がいる? ゴリラズは音響装置の中にある現実と虚構の裂け目であった。」ということを誇りにし続けた。

マードックはどういうわけか、9歳の時に給食のおばさんで童貞を失いそれからずっと不機嫌なんだと触れ回りもし続けた。

マードック: 初のインタビューで俺たちは自分らのブースを出したんだ。俺たちは自分たちのことなら何でも言ったし、自分たちに反することなら何でも言った。俺たちは手袋を投げたんだ。

偉大なるロジャー・モートンの評価はこうだ。「全てのものが虚構な複製である世界、想像力豊かなものは一切無い世界、宣伝が宣伝を呼ぶ世界、温かみのない産業的な有名人の世界において、『想像』がその想像上で崩壊し始めることは避けられない。」ロジャー・モートンは、音楽が思い起こされる感傷と、またそれにより信じるに足る大きな刺激をもって締め括った。

マードック: 奴がそんなに長々と喋ってたなんて知らねぇが、それは問題じゃねぇ。奴は音楽が好きだったし、仕事もそうだ…

2D: 彼は主に唄うことが好きだったんだと思うよ。

マードック: お前の幻想だよ、能天気。

デイズド・アンド・コンフューズドの制作は、ゴリラズのしっちゃかめっちゃかな世界に、多くのものを含んだ紹介として提供した。ゴリラズの姿勢と意志と野望を。

しかし、口はひとつです。今、すてきな大きなズボンをお見せしましょう。

きちんと後ろ盾しなくては。



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獣の解放 - 明日は今日来る

「俺たちはぎりぎりまでひきしぼって…解き放った」ラッセル・ホブス

契約され、販売されて、出荷されるアルバムと共に、ラッセルとヌードルはゴリラズのファーストPVのためにイギリスのディレクター達のもとへ戻った。一方、マードックと2Dは休息とクールダウンのためジャマイカにとどまった。しかしながら、マードックの悪ふざけは逆に燃え上がった…

マードック: ココヤシの木に登って自分のやり方を磨きながら、マリブの瓶を探していたら落っこちたんだよ。背中から落ちて、CDを何枚か滑り落としちまった。俺たちはPVを撮るために次の日飛んで戻ることになっていたんだが、もう少しでキャンセルしなけりゃならないところだったぜ。

ああ、はい。「トゥモロー・カムズ・トゥデイ」のPVに先駆けて…

ゴリラズのファーストプロモーションビデオのためにディレクターとの電話が切れた時、ゴリラズのそもそもの話によると、「みんなの耳にはっきりとひとつの怒鳴り声が返ってきた。声の持ち主は名をパウロ・スキンバシオといい、作家で、現代の伝説的な映画作成技術『四柱式フレーム』の発案者である。伝説のイタリア人ディレクターは、評論が公表されるに従って、古い『Boom Ho-Lio(My Mind and Her Mother)』や『Stop Now』といった、当時のラテン映画の中の目立つようなものに埋もれていった。」

これらの映画が全く現存していないことは事実だ。78歳のパウロは人生において一度も撮影をしていない、口だけの初心者だった。混沌が舞台セットの最高権力を支配し、ミスター・スキンバシオが撮影したPVはレコード会社の事務所の外のごみ箱の中で初公演を行った。

マードック: みんな、少しボケてるだけで変わってはいるが天才なんだと騙されないように、かなり気を付けなけりゃならなかった。

ラッセル: 実際、その男は一度もカメラを持ったことすらないヘタな道化師だった。

ヌードル: うん。完全にいかれてたよ。

そんなわけで、彼らの特徴を隠す厚い灰色の毛布という夜の闇に紛れ、ふたりの男、ジェイミー・ヒューレットとマット・ウェイクハムがコングスタジオの中にこっそり入れられた。これは現在精神病でぶつぶつ文句を言っている完全武装のスキンバシオにバレるのを避けるのために重要なことだった。野放しで、誰かがスキンバシオの仕事や「子ども」、「傑作」、「原作」に手出ししようものなら、激怒して犬に八つ裂きにさせた。これがたくさんの理由から危惧されることである。第一に伝説の「イタリア人」ディレクターが現在ドイツに出かけている最中であること、第二にそれが翻訳アプリの「バベルフィッシュ」による翻訳程あてにならないこと。完全明快に最良に進めよう。

そうして、創作漫画家で、ハードカバーの漫画の女性キャラクター、タンク・ガールの共同制作者である、地元のトラブルメーカー・ジェイミー・ヒューレットが、歴史の折り返しからPV作成の発起人を救うために連れ込まれた。ヒューレットはPV作成の経験はなかったのだが、彼の親友で一時期は一緒に暮らしていたこともあるデーモン・アルバーンはジェイミーの名前を挙げ、この仕事にふさわしい男だというデーモンの直感は正しかった。

デーモン・アルバーン: この仕事にふさわしい男だよ。

え…はい、そう言いましたが。ゴリラズは初めのうち、ファーストPVでライブ映像をかなり使うことになるかもしれないという構成に同意することについて不信感を持っていた。

2D: 俺たちはなにか「カートゥーン・バンド」みたいに現れるのは経歴的に少し早過ぎるんじゃないかとちょっと思ったんだ。それで以降の動画よりもたくさんライブの場面があるんだよ。

しかしながら、少しの説得の後、考えを変え、ゴリラズとジェイミーの間の創造的な協力関係は強固なもの、世界を揺るがし結果を出すために、次の段階へ進むためのものになった。外見の面においては、ゴリラズの曲を世界中へ向けて売り込むことにおいて、主要な構成要素と代えの利かない財産のひとつとなった。マードックはいまだにヒューレットを「審査中」とみなしている。

マードック: 聞けよ。お前らは今までと変わらないだろうがな。もしヒューレットが先手を打ちやがったら一抜けだ。そうしなければならないなら俺はスキンバシオを呼び戻すさ。

アニメを世に出すことを完全に任せてバンドが口を挟まなかったため、ジェイミーは「トゥモロー・カムズ・トゥデイ」のPV用に裏道や路地、ネオンだらけの歓楽街などのロンドンの風景の場面を録画するためにマット・ウェイクハムを呼び寄せた。ゴリラズメンバーもまた市街周辺の色々な場所で一緒に撮影された。

マードック: ああ、覚えてる。

2D: よくやったよね。

マードック: ナマ言ってんじゃねぇよ、うすのろ。俺は夜の街を背景に俺たちを配置するこの試みのために起きてたんだ。なんとやらは「エロく、鋭く、危険に」と言う。俺の名前をググったら目にする最初の3つの言葉だ。

2D: すごく若く見えるところがいいじゃん。

街並みやウェストウェイ、ソーホー、住宅団地の密集したコラージュは、疾走感や閉塞感、憂うつ、興奮を呼び起こす。このセッティングの産物と反応の両方がゴリラズの特徴となっているようである。

マードック: 俺は先に撮って夕方をオフにした。ソーホーのよさげなバーの荷物置き場に降りて行って、たくさんのガラクタと一緒にいまだに捕まらないでいる。ある意味ではそれは最高の時だった。それからの俺の評判はそれほど大幅にひとり歩きしなかった。

都会の風景に溶け込んで存在するキャラクターを制作する、仕上げの効果を完成させるためにパッション・ピクチャーズという動画会社が選抜されたことがポイントである。

ジェイミー・ヒューレット: 彼らはロンドンにインフェルノと呼ばれる新しい機械を持っていて、その時ロンドンにそれを扱える、静止画と写真と素材とを共に素晴らしく天才的な効果の読み込みができる人間が8人しかいなかった。それにこのインフェルノは、素晴らしく見えるタイミングに写真を捻じ曲げるような、いかれた効果の読み込みを可能にした。だが今は恐らくフォトショップできる…けど当時は…うわっ!

ジェイミーは以前パッション・ピクチャーに勤めていた。

マードック(子どもじみたトランペットの騒音を響かせて): アンドリュー・ルヘマン、俺たちはパッション・ピクチャーズのリーダーからお前に簡単な説明をさせるためにこの放送を中断しているんだ。さぁ、やれよ! どうやってゴリラズに取り掛かったんだ?

パッション・ピクチャーズのアンドリュー・ルヘマン: ジェイミーとパッションが一緒にコマーシャルをすることから始まり、次に実際には絶対に起こり得ないコマーシャルをもうひとつ調整している。広告代理店での打ち合わせから解放された後で、ジェイミーはこう言った。「君にめちゃくちゃ話したいアイディアがあって――俺のルームメイトとの仕事についてなんだけど」 ジェイミーのルームメイトがあの有名なブラーのデーモン・アルバーンだなんて知らなかったも同然だ!
 一緒に座るとジェイミーは、バンド用にこんなアイディアがあって、これらがそのキャラクターなんだけど、どう思う?と言った。私はおもしろそうだねと返した。ジェイミーのデザインは素晴らしいし、興味を抱くに値するどんなアニメーターにも一緒に働く機会に恵まれると思ったしね。単独では難しいだろう――危険な音楽とする作業と、本当に骨の折れる苦労をするだろう――でも、デーモン程の者とする作業と、夢のチームを得ることができるだろう。そして、あるカフェでのジェイミーの一声で始まった。「これなんだけど、どう思う?」

マードック: ふぅん…俺のバンドのゴリラズという名声の、最も最初の段階が、他の「アイディア」になってるなんて信じられねぇ。けど、俺たちが最初から勝ち組であることを証明してるんじゃねぇか?

低予算の動画は全員の信念を強めた。ゴリラズはカメラの前で自然体だったし、メンバーそれぞれのアイデンティティはそれぞれ異なる個性を前面に押し出した。ヒューレットと会社は手綱を離した。

ヌードル: このPVは私たちのシルエットが映ったカバーと一緒に世界中のたくさんのメディアに送り出された。

マードック: ただの影でさえ俺たちを表す記号だった。

2000年12月27日 「トゥモロー・カムズ・トゥデイ」のEP盤がリリースされる

ダン・ナカムラ: 明日とはすなわち今日である、それが全体のポイントだ。明日がすでに来ているように、将来、野性的で突拍子のないものになると想像している全てのものは、すでに来ていて通り過ぎようとしている。この曲はゴリラズを上手く説明するのにいい味を出している。説教なしに挑戦的な考えって意味でね。

マードック: 笑えねぇんだが、よかったらちょっとダン・ナカムラと話すのやめてくれねぇか。

失礼。


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「ゴリラズ」―唄による歌 ②

DOUBLE BASS

9番目の曲は、酔わせるブレイクビート・サイケデリックの、精神が不安定になる1曲だ。ラッセルが優れた才能の片鱗を露わにする。

ラッセル: 俺たちがどうやってこの曲に至ったかは、実のところものすごくおもしろい。俺は最高な小さなもの、端に吸着パッドのついた小さなマイクを、タンディという電気屋で買った。これを誰かの頭の横に置いくと、そのひとの考える音を拾って録音するんだ。彼らが想像していることを文字通り音楽に変身させるのさ。サンプリングにしてみればすごいことだ。

マードック: 俺は2Dに言ってやった。「目一杯咳止めシロップをがぶ飲みして2~3人の仲間と遊園地へ行く、1950年代をベースにしたロカビリーのストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーを想像しろ。今ブライアンはリキュールを飲んでいるから途中で具合が悪くなり始めて、その濃くてべたべたする茶色い液体はブライアンにここにはないものを見せようとしている。ブライアンは遊園地と視覚と泡の狂った世界に嵌められた。お前の頭はどんなだ?」ってな。

ラッセル: これが2Dの描いた音だ。俺たちは何も加えたりしちゃいない。デーモン・アルバーンの声以外にはな。休憩のために2Dがどこへ行こうと、俺たちはなにもしちゃいないぜ。

「All of this makes me anxious. At times unbearably so.(この全てが僕を不安にさせる。そう耐えられない程の時間において。)」

2D: 俺の中にはいつも少し「ロカビリー」遊園地があるんだ…真面目な話。父さんはイーストボーンの遊園地で働いてる。だから「ゴースト・トレイン」もまた俺のルーツなんだ。電気ピアノ、アーケード、観覧車、俺の頭はこういったもので溢れてる。アタリっていうゲーム会社のポンていう古いゲームの音についてもなんとなく考えてたよ。

マードック: 少し巻きでいけるか? どれくらいかかるかわかんねぇや。


ROCK THE HOUSE

もうひとつのゴムでできた手足のショー、絵に描かれた幽霊のようなデルによる無気力なラップ、正確なスローモーションの曲を打つ歌詞。金管楽器が刺しスネアが打つ巧みで素早いリズムによって裏打ちされ、ゴリラズはもう一度君たち全員に「とにかくそうしろ」と強く願う。

マードック: くじ引きで俺はこの曲を手に入れたんだ。

ラッセル: メインのブレイクはジョン・ダンクワースの「モデスティ・ブレイズ」のご好意により作成された。

マードック: 「好意」だなんて言わないね。実際俺たちは感謝を表して大きな見返りで奴の口を塞がなけりゃならなかったはずだろ。

2D: 「ロック・ザ・ハウス」は本当にCDになんかなるべきじゃなかったし、俺が本当に嫌いなこのアルバムでただひとつのものだよ。俺にはできることがないしまじで。俺はこの曲で、パンパイプの担当で演奏したはずだよ。

マードック: パンパイプ?! これにくそみたいなパンパイプが使われてるなんて誰も言ってなかったぞ。ちょっとこの場を外させてくれ。

ラッセル: 素晴らしい曲だが、2Dのボーカルの存在なくして、「クリント・イーストウッド」の半分の出来かな。

マードック: すまん、ラス、何言ってるかわかんねぇ、友よ。ヨギ・ベアみたいに鳴ってるだけだぜ。「Sheke and Bake, do whatever it takes(上手くやるんだ、何としてでも)」? ここいらにいるお前のお化けみたいな友達のことについてのスクービーを手に入れられなくしてもらうし、お前もと薄々思ってるぜ。


19-2000

ゴリラズデビューより2枚目のシングルにふさわしい「19-2000」は、高音と低音と大きなブレイクのヒップ・ポップ・カレッジのようなところをドライブする。

2D: 俺は時計のアラームを切ってキーボードでリフをサンプリングした。それを繋いで変な音にした。詞は…ええと、すごく抽象的な…「Get the cool shoeshine(かっこいい靴磨き欲しい)」。すごく深みがあるけど、すごく薄っぺらくもあるみたいな。

マードック: ふーん。「天才」と「まぬけ」の間のいい線行ってるんじゃねぇか?

2D: ああ、そうだね…うん、そう思うよ。その通りだ。

羽鳥美保が、ティナ・ウェイマスも加えて再びコーラスに登場する。

ラッセル: ダンは元トーキング・ヘッズのメンバー、トム・トム・クラブのティナ・ウェイマスにいくつかのトラックを送り、彼女はそのミックスに自分のボーカルを足した。彼女はCDにそれらを焼いてから送り返して来たんだ。そうしたらダンは楽曲にそれらを落とし込んで、ヌードルと美保のボーカルと合わせた。このブレンドは本当に上手くいったってわけさ。

マードック: しかも、俺たちがこのタイトルに則してるってことも見て取れるだろ? 1998、1999、19-2000。ほらな?


LATIN SIMONE

ゴリラズのまばゆい生命の輝き、くすぶったキューバの楽曲、ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブのイブラヒム・フェレールの魅力的なボーカルの演出。ゴリラズの音のパレットを全く異なる大地へ連れて行く。

ラッセル: この曲、「ラテン・シモーネ」は、かすかにラテン風で、俺はただブエナ・ヴィスタの音楽とイブラヒムの声の愛の中にいる。俺たちがイブラヒムとコネを持つにあたっては、ワールド・サーキットというレーベルのニック・ゴールドという男を通した。俺は楽曲をニックのレターボックスに入れて、俺たちを助け出してくれないか頼んだ。

とても大きなキャンバスを通してこのアルバムの音が広がる、ラテン様式の手ごたえが加わった。

2D: 俺たちはイブラヒムに詞を絶対書かなかった。イブラヒムは時々、俺の…俺の作った「what's the matter with me?(俺の何が問題なんだ?)」っていうラインの少し感傷的なところに目をつけて、「que pasa contigo?(どうしたんだ?)」に変えちゃったりしたんだ。俺たちはイブラヒムにはまじで好きなようにさせることにした。イブラヒムの描いたメロディは俺の描いたものとはちょっとだけ違ったし、だから異なったものになったんだけど、俺は好きだな。万事いいよね。

ラッセル: 聴いてみればこれは…大変なものだ。2005年に亡くなったと聞いて、とても悲しく思うよ。彼は素晴らしくて、熱い魂を持っていて、彼の純粋さは驚くべきその声の、素晴らしく表現豊かな特性に聴くことができた。彼は自分の声をたっぷりこの曲に注いだし、彼と制作することはとんでもない名誉…俺たちの誰もが決して忘れられない経験だった。魔法がかった魂だ。


STARSHINE

ゆったりとしたレゲェの楽曲、それに催眠術にかかりそうなビートと潜り込ませたギター・リフ…

マードック: 俺のベースがどれだけいいか聞こえるか? これのために俺は2本指を使わなけりゃならなかったんだ。

2D: 「星の光」。十分な時間をまじでかけられなかったしたくさんの詞もまじで書けなかったから、この制作はまじで楽しんだよ。起きてやっただけ。

マードック: まるで口を開けたら音が飛び出したみたいだったな?

2D: それが俺の覚えていることだよ、うん。

マードックは驚いて飛び上がった。

マードック: 幽霊が俺の帽子を脱がしやがった。

他のメンバーは無視した。

マードック: 本当だって。ここに座ってお前らに色々話してたら幽霊がさっと小突いたんだ。見ろって、床に落ちてるだろ。

ラッセル: 座れよ、マッヅ。インタビューが終わるまでここにいろ。

続行している間、ご立腹のマードックはどう見ても無関心な様子で席に戻る。


SLOW COUNTRY

「スロー・カントリー」は、夏風が奏でる物思いにふけった思慮深い音楽に聞こえる、歌のそよ風である。しかし、アップビートの殻のすぐ下で、再び不安な感覚があらわになる。2Dは低く口ずさむ。「Moving out of city/ Better have a second chance/ Kicked a lot of provlems, we kicked a lot of them.../ Can't stand the loneliness...(街を出て/次のチャンスを得た方がいい/問題なんて蹴っ飛ばしてさ、色んなことを蹴っ飛ばしてさ…/孤独には耐えられないんだ…)」

マードック: 元気出せよ、馬鹿野郎。大丈夫だって。

この曲は2Dのフリースタイルなボーカルの風刺とダウンビートなキーボードに分かれている。

マードック: 一体なんだって最後にくそみたいなザ・マペッツの「マナマナ」なんかしやがったんだ? それまでは本当によく行ってたってのに。

2D: 俺は唄ってただけだよ。マイクが入ってるなんて知らなかったんだもん。


M1 A1

アルバム最後の曲は、ひとりぼっちの不気味な感覚を引き起こす、ゾンビ映画『死霊のえじき』の不吉な予感と共に始まる。ゴリラズのライブバンドの総力がステレオから爆発する前に、テンションはゆっくりと上がっていき、ギターははらはらしたクレッシェンドに上がっていく。

2D: 俺とラッセルはある午後集まって、俺はラッセルに俺のハマっている山積みの映画を観せてあげた。ボロボロの古いゾンビ映画をこんなにたくさん。俺が音楽に感じるのと同じものが、俺の中に響くような何かがあるんだ、本当にたまにだけどね。唯一魂を意識できる感覚、みたいな。コミュニケーションの難しさって氷の中に閉じ込められたように感じさせる。探して、失くしてそして…狂う。それと、彼らが互いに頭や物を食べちゃったところの血みどろの欠片が俺は好きだなー。

ラッセル: 俺はこの青髪少年が言わんとすることを汲み取って、サンプルを撮った。俺たちはこれと一緒にライブセットを開けたもんだ…これっていうのが、この感覚だ。あんたたちは人生を探している孤独な魂だ。これが、俺たちが何度か使った技だ…

2D: 大げさかもだけど、俺、動きと速さと間合いの感覚を捕まえようとしたんだ。「M1 A1」って戦車、でしょ? ゴリラズが暗喩的にイギリス高速道路に沿って疾走する場所まで。

マードック: 何言ってんだ? 俺が歌詞を書いたんだぞ。ちくしょう!! あと何回だ?! 俺はずっとハワード・ディヴォートの大ファンで、クリスマスにばあちゃんに会いにストークまで車を運転しながらマガジンを聴いてたんだ。高速道路ががらがらだったからロメロの『死霊のえじき』を思い出して、そんで俺はその全部を少しくっつけて、「M1 A1」と一緒にやってきた。がらがらの高速道路はいつも警告して教えてくれる…今にも加えられるゾンビの攻撃を。

ヌードル: 車に隠れて引っ張ってこられた猫がいっぱいいるように聞こえるように、3倍もギターを弾いたよ。それから思いっきり叫んだの。

マードック: ひゅう! 終わったな。以上だ。15曲の純金。

オリジナルのCDのリリースが始まると、アルバムはいくつもの顔をもつ逸品になった。

「10ヶ月で30本近い曲を出した後、ゴリラズはダーク・ポップ・クラシックを届けた。ジャマイカのダブからニューヨークのヒップホップ、キューバのラブソングから南ロンドンのスカムパンクまで散らばる、広範囲な影響力を持つ性的で野性的で魅惑的な、ゴリラズに最初から長くいる演奏者は目・耳・心を開かせるものであり、まさにロックという長い幹線道路の標識だった。ゴリラズは彼らの様々に異なる背景と広範囲な影響力、彼らの多岐にわたる様式と破壊的なもの・近代的なもの・今でも難なくアクセスできる音を作るための、心を動かす才能を混ぜ合わせた。これは起きる時、始める時、終える時、頭の中の恋人と楽しむ時にかける音楽である。マーキュリー賞の受賞が難くないということは、ゴリラズの半分がジョニー・フォリナーという事実からではない。絶対にかっこいい。絶対にいかしている。」

ゴリラズの協力者たちの助けと共に、もともと想定していたものよりもはるかに大きな構造に集結された。ゴリラズデビューというこの巨大でぐらぐらした創作物は、それまでは15階建ての高層ビルになる予定だったが、現在は音による多重次元のガウディハウスとなっている。

2000年6月2日 ゴリラズのアルバムはニューヨークのマスターディスクにてハウィー・ウェインバーグにより作られた。

マードック: クソ程確かに、俺たちは袋の中に赤ん坊がいたことを知っていたさ。

お次は…「ホテル・スターダム」。

マードック: おう! 「俺の部屋を用意しろ、俺はバーにいる」。


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「ゴリラズ」―唄による歌 ①

RE-HASH

はなばなしくもアップビートなこのアルバムのトップバッター「Re-Hash」は、不安定な電子音と色彩豊かなリズム、壊れたギターによって完成された。荒れ狂うスクラッチとリミックスをするキッド・コアラは、デッキの技でゴリラズのラッセル・ホブスをアシストするためにダン・ジ・オートメーターに呼び出された。この曲にキッド・コアラの最初の業績が表れている。

その頃歌詞は、マグネットにフレーズを書いたマードックと、それからそれらを冷蔵庫に投げる2Dによって、切り張りする方法で組み立てられた。

2D: 俺たちはたくさんのアイディアをばらまいてから、どんなフレーズでも繋ぎ合わせるっていうことをし続けた。

ラッセル: いくつかアルバーンの指導を受けた2Dのボーカルは、満ち足りて自信にあふれているように聴こえた。リハーサルの早い時点から、か細く甲高い音程の全てに負担がかからなくなっていた。

ヌードルは羽鳥美保のコーラスに加わり、ふたりのすばらしいハーモニーは2Dのリードボーカルに完ぺきに混ざり合った。

マードック: そうだ。この音楽の土台のために、俺がアンプを持ってきて水中に置いてやったんだぜ、上の階のある部屋の水槽の中にな。それから俺たちは天上からマイクをぶら下げて、通り抜ける雑音や全てのくぐもった音、上手くいった録音をレコーディングした。

2Dはそれから、ムーグのブリープ、テルミン、バックボーカルのゲスト、引き延ばしたダビングをいくつか、そして深いサブ・ベースの水中音波のノイズなどの、様々なアマチュアの機材をもって仕事に取りかかった。最後には、不思議さの特殊な力を与えるために壊れたシタールのラインを加えた。

同時に、2Dが全てのガラクタに向き合っている間、マードックは地元の学校のグラウンドへ赴き大きな投げ縄を使って子ども達を集めていた。それからマードックはこのトラックで歌うよう子ども達を脅した。

このコンビネーションにより出来上がったものは1曲目にふさわしいと思われた。一丁上がり。

ヌードル: 私たちはなんでもできる! そんな純粋な喜び。

マードック: いい子だから、さっき俺が言ったろ、俺は解き放たれたランプの精のようだったって。

2D: (ぼそぼそ)ランプの精と、単に瓶の中に捕まってるひととは違うよ。

バシン!!とマードックは、開きっぱなしのドアのように小言が出てくる2Dのあごに一撃を加える。ラッセルはその争いに気付かないふりをし、

ラッセル: 俺たちが2枚目のアルバムで変わったな、と思ったら、この音がどれだけポジティブできれいかが聴こえてるってことで、すごいことだぜ。


5/4

2番目のトラックは、決着を着けるとんがった場になった。まるでゴジラ対キングコングのように、ヌードルと2Dは、魔法がかって、静かな鼓動で、都会的な、自殺的なまでのボーカルでセンターを競って争った。

マードック: ああそうさ…全てがまるく収まっているのが聴こえるだろう。「She turned my dad ooonnn!!!!(彼女は俺をオンにした!!!!)」

ヌードル: マードックはいつも私のギターのカウントがズレてるって言うけど、それは違うよ。この曲のタイトルにある通り、5/4のカウントなの。

マードック: ズレてるさ、いい子ちゃん。聴けよ。2Dのすばらしい1本指奏法のニューウェーブなキーボードによってかろうじて制御されてるだけさ。2Dはそんな感じでただすげぇんだ。2Dがなぜこのバンドにいるかを覚えておくんだな。そうそう、さらに俺にはこの曲のベースから手を引いてくれる、ふさわしい汚れ役の警察を手に入れる必要もあったから、スピーカーキャビネットに開いてる大きな穴を蹴っ飛ばして、壊れてバタバタしているスピーカーコーンを響かせ続けた。俺は俺の欲しかった超まっすぐなサウンドを手に入れた。

2D: このカウントは俺を振り落とすんだ。君の頭をぽんぽんしながら、同時にお腹をさする感じだよ。結構難しい。

マードック: そんなことしてねぇでなんでただ唄わねぇんだ? 採決。


TOMORROW COMES TODAY

コンクリートジャングルの不吉な騒音というこの閉所恐怖症の異常者は、様々な亜音速で構成された何曲かのトラックの土台の組み合わせを描き出した。その亜音速とは、キーボードとベースのパートが、1、2オクターブ下げるためのペダルを通して生み出すものだ。最後に混ぜるものは聴覚を乱すに十分だ。

2D: すごい「サウンドトラック」っぽいよね、これ。うーんと…ぼやけたフランス映画…みたいな。ちょっと、監視カメラと材料っていうかについてさ。「トゥモロー・カムズ・トゥデイ」はちょうど…君の考える…まぁいいや、俺はまた今度にするね、実際君には時間がないんだし。でも、それはお互い後々言葉の重荷にしかならない。たくさんのそれは俺の頭の中に入ってくる色んなもので、俺たちはまとめてつっこんで他のよく聞こえるビットに貼りつけた。そうしなければならなかった、意味なんか必要なかった。

マードック: 俺にはこの言葉が浮かんだね。「ノワール」

2D: は?

マードック: 「ノワール」。退廃的な感じだよ。そら、やったぜ。

2D: 君にもこの曲に復活したコングの魂が聞こえるでしょ。修道士の詠唱みたいな…超気味が悪い。

マードック: それは実のところはサー・エメリック・コンの幽霊なんだ。奴はこの場所の持ち主で、終わらないパーティの主催ができた。だが奴の魂は今、永久に酩酊状態の迷子さ。お前がこの曲に聞いたっていううめき声はな、鎮痛剤を探す頭蓋骨が掴んだ、奴の乾いた魂だ…

2D: 「I'll pay with tomorrow. Tomorrow cames today(明日にしよう。明日は今日来る)」。うーん。そうしたかったかな…

マードック: 2Dがボーカルに専念している間、俺はちょいと用を足しにトイレに行った。廊下でマイクが拾った音の口笛を吹いていた。俺たちがこの曲を再生していた時、西部っぽい何かが少し聞こえた気がしたんだよ、「モリコーネ」だかなんだか。俺は都会っぽさとカウボーイスタイルの口笛の組み合わせが好きだ。荒涼とした西ロンドンのサウンドトラックみてぇな。

2D: どうでもいいけどコンクリートの下にあるのはきっとただの砂漠だよ…


NEW JENIOUS

オデッタの「ヒット・オア・ミス」の、ボ・ディドリーのパフォーマンスのサンプルを語りながら、ラッセルはバックで2Dが物悲しい裏声を披露する、入り組んで縒り合わせたリズムを練り上げたいくつかの追加のプログラミングのテンポを上げた。

この忘れられない悲しみに満ちたナンバーは、雨でいっぱいの狭い路地と夜の活動の感傷的なイメージを思い起こさせた。歌詞は注意喚起をし、疑う感覚を養うことを勧める。「Brother, sister too/ Do waht you must do/ Don't trust people you meet(兄弟姉妹も同様/せねばならぬことをせよ/会う者を信ずるな)」。

2D: 実はね、これはマードックが監督したんだ

マードック: ああ…そうだな。俺はこの素材全部すっかり知ってるぜ。もう100万回と聞いたからな。お前らのインタビューが終わるまで30分くらいパブへ行って来てもいいか?

ダメです。我々は1度しかインタビューしていないのですから。


CLINT EASTWOOD

シンバルを打つ4カウントで導入するこのゆらゆら・ふらふら・ぼんやりした、巨大でどっしりしたダブはゴリラズを代表するメロディとなった。ゴーストラッパー・デルのゆるく粋で熱い才能はこのトラックにて初登場する。2Dは、ある蛇使いのオーガスタス・パブロに、この曲に程よくかぶせたエンニオ・モリコーネのメロディカラインに出会わせようと試みる。

マードック: これ以上病気のように流行るってんなら、俺たちはワクチンを作らなけりゃならなかった。鳥インフルエンザの方が感染する可能性は低いぜ。

2D: おもしろいことに、ボーカルを落とし込む時俺は風邪をひいてたんだ…マジで作業中ずっとだよ。

マードック: この曲がどうやってできたって? そうだな、俺はホンダのオートハープのZコードの「レゲェセッティング」と書かれたボタンを押して、つまみを「フラップ」から「ヒット」に切り替え、成功の保証されたデモを世に出した。

2D: 俺がまずメロディカで手を加えて、ラッセルがいいビットを刻んで、マードックがメロディを描いてから、俺が唄ったんだ。俺たちはファーストシングルを「クリント・イーストウッド」と呼んだ。メロディカのラインに「続・夕陽のガンマン」のようなものを感じたからね。さっき俺が言った、エンニオ・モリコーネみたいに。それに、ダブの感じから、「クリント・イーストウッド」っていうのはそんな風に名前を使われた1970年代のレゲェスターへの賞賛だったんだよ。


MAN RESEARCH

コオロギの背景のオープニングとザ・クラッシュの「ストレート・トゥ・ヘル」を思い起こさせるイントロ、私たちは沼地のようなリゼルグ酸のダブのど真ん中に投げ降ろされた。

ボーカルの切り貼りの層にすることによって、2Dは自分で喜びのファルセットと疲れた鳴き声の間を反響するコール・アンド・レスポンスの合唱を創っている。

ラッセル: 誰かがジャングルの果てしない場所や空間でうなっているみたいだ… この曲は本物の幻覚作用のある音質を持った。

マードック: 誰かさんはその日麻酔薬の瓶にいたみたいだな。

これらのような…その…ディズニーの「ファンタジア」の中の水を運ぶほうきの柄のような、この曲を行進している活気に満ち溢れた声の軍隊を打ち建てる2Dの何層にも重なったボーカル。とかなんとか。


PUNK

1分36秒から始まるこの曲は、このアルバムの中堅のエネルギッシュな一発である。イントロは誰かが苦しんでいるように怪しく聞こえる。

マードック: 「パンク」? その名の通り! 曲中で聞こえる手拍子は地元のエセックス・ボウリング・クラブの老いぼれから録った。俺はレコーダーを下ろしてそいつらの手拍子を全部録ったんだ。奴らの顔を見るべきだったな。ボケ老人集団の笑顔を。奴らは絶対にちゃんと理解してないね。そいつらには飴玉を支払っといたよ。

ラッセル: ここに本物の短くパチパチいう何かが欲しかっただけさ。それにこの曲は俺たちにサインをさせて本当にアルバムに近づかなければならなかった曲でもある。俺たちがジャマイカを離れる前に、エセックスに戻り、終わり始めるのをこの歌はとてもよく完成させていた。

ヌードルのギブソン、シックス・ストリング・ソードはコードによる引き締まった働きを成した。

ラッセル: オリジナルバージョンは1時間を優に超えるんだが、このバージョンの通り、カットした。

マードック: こっちの方が好きだな。2Dは少しいかれてるみてぇだ。

2D: そうなんだよ。長い間うちの玄関の鍵を探してて、結局ずっと鍵は失くしたまんま。まったく、腹が立つ。

マードック: 全てのアルバムがこんな感じの曲を求めてる。まぁ、俺は買ってないけど。


SOUND CHECK (GRAVITY)

ゴリラズのもうひとつのデジタル・ダブ・レゲェの世界に投じた危険な試み。「Gravity on me never let me down gently/ Gravity with me never let me go no no gravity(僕の重力は決して僕をゆるやかに失望させない/僕の重力は決して僕を放さない だめ だめ 重力)」2Dは病んだようなぼんやりしたリズムを坦々と歌う。ロックとレゲェの根源の組み合わせ、ゴリラズはこのアルバムの、ひと休みするのにいいところに位置づけた。

2D: あ、聞こえると思うけど、野外で唄ってるように聞こえるそれは、俺が実際に外で唄ったところがいいところなんだ。それは早朝2時にセミの鳴き声と満天の星空の中、ジャマイカの浜辺の隣の小屋の、屋根の上で唄われたもので、俺は何時間もただそこにいて、宇宙について唄うだけだった…まじで…

ラッセル: この曲は真夜中にレコーディングされた―2Dとヌードルは泊っている木造のホテルの屋根の上に座っていた。月の光を受けてコオロギが歌い、ヌードルの使う録音機が虫の声を採集してもいた。

マードック: それはある日に「ジャマイカンワイルドライフ」へ出かけるチケットだってことを言ってるんだ。なっ?

ダン・ジ・オートメーターは、DJのスクラッチとブレイクを入れるために再びコアラ・キッドを呼び寄せた。

ラッセル: 俺はボム・スクワッドのハンク・ショックリーを思い起こさせるものが欲しかった。ひたすら密集した、スクラッチが凝縮された壁が。

マードック: ラッセルのデッキは燃えちまったんだぜ。ほら、ラッセルがめちゃめちゃに回して焼いたせいでとけたレコードだ。

とりわけ、この曲は、今までのクライアントにバーニング・スピア、リー・スクラッチ・ペリー、キング・タビー、ボブ・マーリーをも含むダブ・ベースの伝説、ジュニア・ダンのベースが彩っている。本当に、悪いラインナップじゃないことについて考える時の曲である。

マードック: ある日寝過ごしたらこの男、ジュニア・ダンが来てベースを演奏しやがった。俺がどう感じたかだと? 言わせてもらうぜ…お前はもうひとつの男のベースには絶対に触っちゃいけねぇ。強ーく忠告してやった。


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HN:
リオ(LIO)
性別:
女性

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