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ゴリラズ伝説

ライズ・オブ・ジ・オーガを趣味で訳しているブログ

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コングスタジオ史

ゴリラズが生活しているばかばかしく素晴らしいウィリー・ウォンカ様式の大聖堂、コングスタジオの歴史に今触れるのはいい頃合かもしれない。

一体どうやってマードックはこのような壮大な、使われていない常識外れの宮殿を、ゴリラズがシングルすら発売していないうちに手に入れたのか?? んー?! まぁいいからいいから、今こそ彼自身の口から、さぁ!

マードック: ちょいとその伝説はしまっといて、何が起こったか教えてやろう。俺はある夜遅くにふと思い立って、インターネット上を捜し回った。その時俺は冷え切ったワンルームで生活してた。暖房が壊れてて、確か…「ドッジィ・ボイラーズ」っつぅサイトを探していた。んあぁぁ…とにかく、俺は「巨大な使われなくなり呪われたどこにもないスタジオ.com」って名前のそのサイトに行き着いた。
 そこのオーナーは、冬の間その場所を管理するために、閑散期の間の「管理人」を探していた。そいつらは広告上では6ヶ月後に戻ると言っているが、俺はそいつらがそんな「いい」場所を放棄しようとしているように感じた。たったひとりだけの志願者…俺だけの面接に出席した際、そいつらは俺に鍵の束を投げて寄越し、叫びながら丘を下りて逃げていった。
 俺はただその場所を見てこう思った、「やったぜ! 我が家だ! お前はここで好きなだけ騒音を奏でられるぜ!」ってな。
 初めのうちはその場所を、ゴリラズをまとめ上げるスタジオの本拠地として使っていたが、やがて俺たちのホームになり、本部になり、また、俺たちとファンとの「オンラインの入り口」にもなった。ゴリラズのキャリアの非常に早い時点から、人々をこの入口にアクセスさせた。コングスタジオで何が起こっているのか、ゴリラズ.comからチェックできるよう全ての部屋にカメラを取り付けた。

ゴリラズ.comというそのサイトは、信じられないほどウケが良く、その斬新さと、ファンとの新しい交流の取り方が多くの賞を勝ち取った。オープンから今日まで、ゴリラズのサイトは、レコードレーベルの他のバンドの行動を合計したものよりも、多くのアクセスがあった。

ヌードル: 私たちはこの場所をゲームやおもちゃ、ビデオ、たくさんの影響力をもつ要素でいっぱいにした。お客さんとサイトに来てくれたひとが、お互いに会話できるところに掲示板を作った。テクノロジーにまかせて、創造的で全てを包容するようにしてみた。オリジナルのバージョンからミキシングするのを人々にまかせて、私たちの楽曲のテープやサンプルをそこら辺に散らかしておくことすらしたし。

2D: そうそう、めっちゃよかったよね、でも俺、たくさんのひとが俺の部屋に入って道具を触ったりできちゃうのがちょっとヤだった。実はちょっと気持ち悪かったんだよね。

2005年6月1日から2006年6月1日までの1年間で、サイトのページとゲームに8200万越えのアクセスがあり、2006年6月、ゴリラズはウェビー賞を獲った。

マードック: 自分の家がオスカー賞を獲ったみたいなもんだな。

ラッセル: ありとあらゆるゴリラズの側面が、ここコングとゴリラズ.comの記録であり実録だ。俺たちの最初の動画をオンラインにアップすることを、全てのインフォメーションにメールして、サイトから音楽界の競争に繰り出した…この先ずっとな。

この新しい区切りへと日々成長を続けている不思議で奇妙な建物は、絶えず増設されているが、暗い過去と無料の所有権は、ヌードルが丘の上の呪われた場所に真実を見つけたある夜まで、謎のままだった。

コングの奥底で、ヌードルは資料室をみつけた。そこで彼女は、遠い過去を引き延ばした、多彩な歴史と共にある建造物、コングスタジオの、恐ろしい伝説を知ったのだった。

元々その敷地はドルイドの集会場所だったのだが、建物の構造上で最優先になっているものは、闇の力と忌まわしいレイラインが一直線に繋がるために、とりわけ特別だった。「幽霊結社」の様々なメンバー達は、間に合わせの大釜に向かって声無く唱えながら、月の周期と蒸気の流れよりそこと確信している地点、エセックスの丘の上の遺跡に集まっていた。

最初の「コン(Khong)」は、古く廃れた共同墓地のてっぺんに、真っ直ぐ立っていた。1665年のペストの流行で亡くなった多くのひとがそこ、浅い墓穴と埋葬の穴に投げ捨て捨てられた。なんてことだ!

今日もそびえているコン邸は、退廃的快楽主義者の酷く残忍な男、エメリック・コン卿の住まいとして1749年に建てられた。彼は、「キング・コン・クラブ」の堕落した嗜虐的な会合の主催者だった。多くの肉体的な願望を満足させると、彼と彼を支持するクラブのメンバーはぶらぶら夜更けまで雑談に花を咲かせた。彼の霊は未だに早朝のコングキッチンを、忘れられなくなるような声音で1杯の水を求めさまよっていると言われている。

現在のこの建物はまた、イングランドで2番目に大きなごみの埋め立て地に建っていた。ごみとは単なる冷蔵庫でも洗濯機でもトラクターのタイヤのことでもない。古いおむつや人工肛門用の袋、狂牛病の牛、宇宙人の腐った胴体について言っているのだ。気温の上がる夏の半ば、その穴から地面を通してにじみ出る悪臭は信じられない! 糞か何かを調理しているかのようだ。

ゴリラズより前の、一番最近のオーナーは、バイク乗りのギャングが「放浪者」と呼んでいるヘルズ・エンジェルズというマフィアの一味で、その建物をクラブハウスとして使っていた。1993年のある夜、彼らは大きなパーティを開き、ミッドランド全域からヘルズ・エンジェルズのメンバーを招待した。地下の3番格納庫を埋め尽くしたライダーは、地元の警察のボスがざっと数えて2000人近かった。しかしながら、興奮剤を飲んでハイになった何人かが泥酔してきた時、火事が起こった。誰かが主要なドアに鍵をかけていたため、誰ひとり逃げられなかった。

マードック: 彼らはみんなカリカリに焼けちまったってわけさ!

コングスタジオが満載の死の要素と悪業、病魔の気配で満ち満ちており、長らく空き家のままだったことは不思議ではない。

歳は取っていたものの駆け出しのロックスター、マードック・ニカルスが鍵を手にしたのが1998年9月のことであり、また、ゴリラズとコングが永遠の契りを交わしたのもその日からだった。「特売!」

マードック: コングスタジオは人間に対して変わったことをすることができた。不思議や、科学で説明できないことや、不平分子、そして俺を引き寄せる磁石みたいなもんだ。それは中に入る者全てに効力があった。まじでその土地を調べてみてくれよ。異常なもんしかねぇからよ。ある夜なんかレニー・クラヴィッツが姿を現し、ゲイのシロクマの目の前で自分の金玉を休ませてたらしいぜ。

「是非チェックしてね」

マードック: 俺はこの家が大好きなんだ。この家は値引きされたバラット社の家か何かみたいな、バットマンの街にしてくれる。しかも、ここいらの天気はいつも少し気味が悪いんだ。いっつも。

ヌードル: そしてゴリラズの全ての生活の大部分はコングスタジオの外に披露されることになった。それは私たちの暮らしのとても重要な部分だった。時には、その建物は逃げることができないんだって思えた…

しかしこれ以上はまたあとで。メインのお話に戻りましょう。どこまで話したんでしたっけ。ああそう、ゴリラズがファーストアルバムを出すことについて…


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カムデン・ブラウンハウス

カムデン・ブラウンハウスとは、たまにしか出演できない、うだつの上がらない者や年少者が演奏することで有名なライブハウスである。だがゴリラズはそんな奴らとは違った。初めての出演からそのエネルギーと大胆さは目を見張った。頑丈に溶接された眼鏡が観客の安全のために出入口で配られた。最高潮のゴリラズの目が眩むオーラを直視することは、自ら視力を放棄する行為だ。彼らは最高だったんだから。

1998年11月5日: カムデン・ブラウンハウスでプレイするゴリラズ、今や知られ、愛されるゴリラズの初ライブ

カムデン・ブラウンハウスでの演出は見ものだった。マードックは最後の前金を積み上げ、あらかじめ連れて来ていたEMIのディレクターであるウィフィ・スミッフィを呼んだ。「俺達の初めての仕事にサインしろ、なぁ? 双方にとっていい評判になり、若者は多くの偉業…驚くべき現象…事象? ……多くの若者に新しい動きを起こさせるだろう。ああそうさ、俺たちにとんでもないことを気付かせるだろう」

ウィフィ・スミッフィは過去、音楽ゲームの権力者であり、歌唱はポンコツでも利きペプシができ、シャンパンをたしなむことがわかっている男だった。その時が来た時、彼には全てがわかっていた…

EMI、ウィフィ・スミッフィ: 『パンク』が始まるやいなや、これからの音楽の進む方向が私にはわかった。それは、これ以上最悪なことなどないだろうと思わせるまでに私を打った。私についていた他のレッテルはこれらのゴリラズを調べることで取り下げられたばかりでなく、私は曖昧な友人である交渉人まで私と同じところまでおとしめた。勝負にならない。

大ヒットと、当然のことながらウィフィと、無比のスタイル、攻撃から免れること、観衆を彼のやり方に乗せること、そしてそれら全ての重要な契約の獲得があった。ゴリラズはサインした。ひとつのギグで。ひとつの歌で。

1998年11月6日 ゴリラズレコードレーベル歌謡祭

この上なく賢明なEMIは、ビートルズやレディオヘッド、カイリー・ミノーグ、グーンズらアーティスト達のホームであるパーロフォンレーベルにこのバンドを置いた。このレコードレーベルの歌謡祭のために、費用を惜しまず全ての障害を取り除いた。

マードック: 俺にとっちゃ、何か言えるとすりゃ、すげぇめちゃくちゃなパーティだった。彼らはバロックの売春宿のように宮殿を借りて飾り立てた。3人の悪態吐きと何人かの可愛い子ちゃんがケーキから飛び降りた。ウォッカはナイアガラの滝のように流れ、ローラースケートを履いた2頭のトラは混ざり合って、「エキゾチック」を考えずにいられなかった。彼らはまた、俺たちに前進の王手も贈ってくれた。それに、厚紙かなにかの、まじででかいありえないサイズの小切手までくれた。それを銀行に持って行くのに俺がどれだけクソッと思ったか言い表せないな。だがしかし、少なくとも負けやしなかったとは言える。どうしたかって? そりゃすごいさ。

全てが次第に食べ物による幼稚なケンカのようなものに変わっていった。2Dがエクレアを、喉に詰まらせる程強く押し込んだのも、ひどいもののひとつである。しかし、しばしば勃発するこれらのイベントの時間の全ては、全くの無駄ではなかった。スミッフィは保守派の支援者を数名連れて来ていた。OK、ゴリラズはよかった…本当に、本当によかった、だが、それがきたる時に、噛み砕いて理解するためのちょっと余分な時間というものがなかったからだ、えー、読者のみなさん?

ラッセル: ウィフィ氏は我々をイギリスバンド「ブラー」のシンガーであるデーモン・アルバーンに紹介してくれた。彼とマードックは、ふたりともが主張するずば抜けた能力を競うような、当然与えられるべき報酬を、本当にすぐに手に入れたわけではなかった。足元に目を落としてデーモンがまずマードックに言ったことには、「君のキューバンヒールはありえないな。見て僕のやつ、いかしてるでしょ」。デーモンはマードックと似たような靴だったが、がっしりしたシルバーのヒールと、大きくてファンシーなゴールドの拍車がついていた。マードックはめちゃくちゃ屈辱だったと思うよ。彼は靴をとても誇りにしてたからね。

しかしながら、チンギス・ハンのような野望のセンスを分かち合うことをもって、ゴリラズとアルバーンは素晴らしい音楽の相互愛による絆の親友とあっさりなったのであった。マードックが主張することにはおかまいなく、アルバーンの協力と情報提供は当初からゴリラズにとってとんでもなく貴重な財産だった。アルバーンはバンドのために父性の象徴となり、時にはプロデューサーや黒幕の制作者となった。多くの陥りやすい罠のいくつかを避けられるようゴリラズに助言することは疑いようのない、彼自身が今までにしてきたことによって得た知識だった。

しかしながらマードックは、音楽についての会話を要求するよりも、それに公平に参加するためにもう一度強く問題を押しつけた。ミスター・ニカルスはそのコソ泥のような目を2Dの新しい恋人、愛らしく若い女性シンガー、レイチェル・スティーブンスへ向けた。彼は多くの静かな夕方とお楽しみを、魔法の、夢中にさせる呪文と共に費やした。「続けろ…続けろ…続けろ…続けろ。続けろ…ああ、続けろ」

最終的に、彼女がマードックの強烈なまじないにこれ以上耐えられなくなり、持っていたドリンクを彼の顔面に投げつけて怒鳴り散らした。2Dとレイチェルはマードックの絶え間ない嫌がらせが原因で翌日破局した。

2D: さよなら、大好きな君。

マードック: 終わったことさ。

元Sクラブ7、レイチェル・スティーブンス: スチューポット、2Dの本名だけど、ええと、そうね、私たちは深く愛し合っていたわ、ええ、つまり、私はいまだに彼が好きだけど…ああ、マードックのせいよ。2Dが見ていない時はいっつも私と関係を持とうとしてたみたいだし、私たちの関係を壊そうとしているみたいだったし、ねぇ、実際考えてみたら私のTシャツが1組ダメになったわ。

7フィートの小切手を銀行に預け、ゴリラズにはコングスタジオの外観を今あなた達が目にしている姿になるよう、ハイテクでおしゃれなガラクタで飾るのに無駄にできる時間はなかった。これ以上になくいかれたことには、ゴリラズは自分達で指揮を取り最上の世界デビューをするという、誰もがうらやむような企てに着手した。

マードック: もしこの船がつぶれても、そうさ、自分達以外に誰も責めるヤツなどいやしねぇ。

1998年11月31日 ゴリラズ、コングスタジオにてアルバムの制作を始める

ウィフィはマードックと2D、ラッセル、ヌードルを作業に配置した。

ウィフィ: 私に利益を寄越し、そして私は君たちと同じことをしよう。わかったか?

マードック: ああ、わかっているとも、スミッフィ。ドラマティックなサウンドは不要だ。俺たちが歌う契約で、間違いなく同意したことだ。で、そのまぬけな赤いカツラを押さえとけよ、相棒。驚いたぜ。

しばし時間が流れる。

ウィフィ: ええと…これは本当にカツラではないんだ。地毛だよ。

奇妙な沈黙。

マードック: まじか。

マードックは固まり、すぐに取り繕った。熟考し、落ち着きを取り戻した。

マードック: いいか? そこが重要なんじゃない。俺は「俺を信じろ」と言ったんだ。OK?

ゴリラズは手早く40のトラックを作り、そこから15の傑作に厳選した。

ゴリラズの噂は野火のごとく音楽界に広がった。

新曲は白熱し、皆がその歌を知っていた。完成まで秘密にし続けなければならない全ての企てに関わらず、スーパースターとコラボする長い道のりの一番最初は、コングスタジオの住人に「砂糖を借りに」、ひょっこり立ち寄った。そしてついにそのアルバムに姿を現した。

ラッセル: チボ・マットの日本人シンガー、羽鳥美保。彼女はヌードルと「リ-ハッシュ」でハモった。この楽曲は俺達のデビューアルバムの皮切りとなった。

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ヌードル: とびきり特別な届け物

で、何の話でしたっけ。ああ、そうです、もう一歩進んで、もうひとつの背景へ。まだ未完成のゴリラズには、その足りないものをみつけ出す必要があった。急いで考えなければ。NME週刊音楽雑誌の後ろの広告を見るマードックの習慣、尊敬すべき時間において。

マードック: 俺は、その下の電話番号を注目させる言い回しを読んだ。「国際的な現象が世界制圧のためにギタリストを捜しているうんぬんかんぬん。グッドなユーモアセンス必須。ヒッピーお断り、などなど…」 受話器を置くや否や、扉がノックされた。扉を開けると、そこには誰もいなかった。

さびれた廊下に立っていたのは、フェデックスのマークの入った高さ10フィートの貨物コンテナだけだった。マードックが部屋の真ん中まで木枠を押して行くと、箱の中から身長3フィート2インチ(100センチ足らず)のヌードルが飛び出した。

2D: それがまじで来るなんて思ってなかったことを認めるよ。俺たちはスタジオのドアをノックする音を聞いたのに、そこにはただその箱があっただけだった。小さな日本人がレスポールを持って飛び出してきたんだ。彼女の話す言葉が俺にはわからなかった。ただただちんぷんかんぷん。でも、それから彼女は200もの悪魔がアラビア語で絶叫しているようなすさまじいギターリフを解き放った。天才だ! 彼女は20フィートのハイ空手ジャンプと共に締めくくった。おじぎをして、そしてたった一言、こう言った。「ヌードル」。

マードック: そうさ! ヌードルにその空いているポジションがハマり、そして俺のバンドは完成した。俺達4人のすぐそばを電気が走っているように感じられるだろう。俺から離れるために別の仕事へ走ったまぬけ共全員にこの話をしてやることは、実際すげぇ楽しかったね。

バンドは名前を「ゴリラズ」に改めた。伝説が生まれたのだ!

2D: 俺たちはヌードルが来るまで真のゴリラズじゃなかった。

マードック: あれだ、俺たちはたくさんのバンド名を使ってきた。だが、音楽的で、絶対にジャングルにまでとどろく名として、「ゴリラズ」は非のない名前だと思った。

ヌードルはゴリラズの精神であり「楽しみ」そのものだった。過去の記憶と知識を全て忘れていてさえ、楽しむことは彼女の生活に結びついていて問題にはならなかった。彼女の存在は特別で独特なパーツとして、この奇抜なグループに完璧にハマっていた。

ラッセル: 言語の問題をなしにして、実際に音楽の中に住んでいた、すげぇすばしっこいヌードルをマードックは手に入れた。ヌードルはすっぽりとおさまった。ギタースキルは並外れていたし、純粋な愛を秘めていた。実際、彼女はよく世話を焼くマードックを見て笑い飛ばすことさえできた。

スイッチは入れられた。ゴリラズは息づいている!!

そして動き出している! バンドはコングの腹の中、水面下で活動する厳しい下準備の時期に乗り出した。

ゴリラズは前進しながらレコーディングし、ほとんど間を置かずそのサウンドを固めていった。真っ先に完成したトラックは、「ゴースト・トレイン」と名付けられた陽気な宝石で、二組四人の持つまさにマジックな、はっきりした道筋と証明を示す、絶対的な勝利だった。ヒューマン・リーグの「サウンド・オブ・ザ・クラウド」からのサンプルをベースにし、さらに2Dによるわけのわからないラップをいくつか登場させたこのトラックは、まさに世界中を飛び回り、メジャーレーベルを垂涎させるに十分だった。

マードック: 俺は使い捨てカメラを持ってスナッピー・スナップスを駆け降り、1組のバンド写真を叩きつけた。それと「ゴースト・トレイン」のトラックと簡単なマニフェストを一緒に置き、EMIでは信頼できるミスター・ウィフィ・スミッフィに小包を投函した。俺たちがキていることをただ知らせるために小さなメモも忘れずに。それは、

「ばかなことはするなよ。もしヘマをしたら、後悔することになる。俺はお前自身に力を尽くさせ、お前自身を落ちぶれさせる仕事を約束されている。俺はここでお前にロープを投げてるんだ、坊や、おじゃんにするなよ…お前の人生の平穏のために、俺たちの契約とお前の贅沢な暮しをさ」

というメモだった。ああ、そうだな、わかるだろ… お前は既に特等席を手に入れた。早いうちに関係を築き上げるんだ。ほらな、俺が正しかったろ。ゴリラズは無能な有名人の刺客になった。線引きがされ、人々はどちら側に居たいかを決めなければならなくなった。「未来を受け入れるか過去に溺れるか」。お前の選択だ。

2D: うまくいったみたいだよね。すぐに電話が鳴り始めた。

マードック: ああ、その写真の俺たちが目を引いたんだ。

2D: 物事が本当に忙しくなった。同じ日なんて1日もなくて…うん…素晴らしい日々だった。新しく女の子と出会ったよ。Sクラブ7の、レイチェル・スティーブンスって言って、俺達付き合い始めた。超いい子なんだ。

マードック: その「S」って何だ?

2Dはマードックを見やった。マードックはウィンクする。2Dは視線を落とす。さらなる問題があることは疑いない。

2D: さあね。でもとにかく、俺は俺達がカムデン・ブラウンハウスでやってたセッションに彼女を誘った。それは俺達の初めてのセッションで、俺とレイチェルは休憩時には毎回抜け出した。

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ラッセル・ホブス: 眠れる巨人の目覚め ②

しかしその幸福な時間は続かなかった。その車による虐殺は彼の友人を殺害しただけでなく、彼の運命を決定した。彼の両親は彼をイギリスや、ベルサイズパークの彼の叔父の家、比較的安全だと思われるところへと追い払った。

ラッセル: 俺は療養のため、回復のため、緊張を解くためにここへ送られたんだ…

マードック: (にやにやしながら)けどお前、俺にみつけ出されるとは思ってなかったろう? おい、ラス! こんなことになるなんて思ってなかっただろ?

そうして送られて来たラッセルの持つものの中で、そのごく個人的な能力が、ゴリラズの音の武器のかなめ…伝説のヒップホップマシンになったのだった!

ラッセル: そのボックスが造る全てのビートはひとに教える。かけがえのないものを。そのボックスはヒップホップ界のタイムマシンだ。それが持つ時間と歴史のリズムの間隔は宇宙に直結している。絶対にその機械に触るなよ――丸ごと食われちまうぞ

巨漢の言うところによると、この機械は全てのドラムマシンとビートボックス、リズムトラック、ブレイクビート、そして今まで作られたことのないサンプルとの、偉大な合成体である。事実、それ自体もまた輪廻の中にたくさんの亡くなったドラマーの魂を含んでおり、そう、あなたもなぜその箱がものすごく渇望されるのかを見て取ることができるだろう。現在、その技術のたぐいをエクスチェンジ・アンド・マート裏で買い取ることなんてできないでしょう?

バンドにラッセルが加わり、ゴリラズの資本は尽きることなく増加し続けた。ラッセルは彼自身と共に、ヒップホップとファンク、ダブ、ワールドミュージック、クラウトロックなどの愛をバンドに持ち込んだ。ビッグバンドやブルーグラス、ブーティバスから、ジャズ、スカ、ホワイトノイズ、レゲエまで、彼の知識は留まるところを知らない。さらに、ニューヨークで彼が得た、バステッドからバスキアやブコウスキーにわたる指導による知識と教育は、芸術と文化への理解を促した。

その時期はオーバー気味の時期だったが、本物の賢者としてのラッセルだとも言える時期でもあった。私は…その…必ずしも本当に意味するところはわからないのだが。

ラッセル: ある紳士が、広く様々な分野の才能と知識において、自分の持てる範囲を悟った時、それは万能の時と繋がりがある。偉大な博士のようではなく、たくさんの分野に秀でた人間だ。俺はふたつの分野にまたがっている。なんでも屋だが、ドラムを極めた者でもある…

他に必要なものは?

マードック: すげぇギタリスト?

唯一の弱い繋がりは、ギタープレイヤーのポーラのように思えた。

マードック: その部分は飛ばしていいと思うぜ。

ポーラとは誰ですか?

マードック: 大したことねぇ。過去の話さ。

いいえ、お願いです! ポーラとは誰のことでしょう?

マードック: (溜め息)。ポーラっつぅのは、初期に俺達のためにギターを弾いてた、2Dと知り合いだったこの女だ。

2D: 俺の彼女ね。

マードック: なんだっていい。だがヤツは…あれだ…バンドにおいて本当の働きをしなかった。

ラッセルがバンドに加わった後、その時2Dと付き合っていたポーラは、ギターを演奏するために引き抜かれた。しかしある夜、ラッセルはマードックとポーラがコングスタジオのトイレでいけないことをしているのを発見した。

マードック: 3番の個室だ。…どうやら思い出せるようだな。

不純で卑猥なこの行為のせいで、ラッセルはマードックの鼻をさらに5回折り、今日マードックを悩ませる、合計8回ものずたずたの鼻の粉砕を我々にもたらした。

ゴリラズの最初のギタリスト、ポーラ・クラッカー: ええ。スチューポットとは2ヶ月くらい付き合ってた。私はギターが少し弾けて、彼の働くお店で弦を買ったものよ。彼はとてもかっこよくて… でもちょっと頭は悪かったわね。彼は、このバンドのシンガーになるんだ、メンバーはまだバンド名を決めてなくて、って言った。私は(ええ、全部前に聞いたわよ)って思った。でも、彼らを確かめにコングスタジオへ行って一緒に演奏するのは終わりにしてたのよ。でも、マードックとその脂じみた重い髪、緑の歯、黄ばんだ肌を見た時、「わぁ! 彼こそ私のものだわ!!」と思ったの。

ポーラはますます活気に満ちていった。なにかの薬物の影響が出たのかも知れない。

ポーラ・クラッカー: ああ! 彼はなんてダンディなの! まるでエロール・フリンかなにかのよう! でもトイレの出来事の後、私を蹴っ飛ばしたのよ。嫌な奴。以来連絡はないわ。お金もなくなってた。それから彼らのバンドはすごく成功したから、私は彼らのためになったんだと思った…でも落ち込みもしたわ。頭の中で。人間を傷付けたいみたい。彼らは私に、ゴリラズの物語を書き出させようとした。でも私は、そのヌードルってギタリストの踏み台だった。彼らを追い詰めてやろうかと考えて、彼らの頭にくぎを打ち込み始めたわ。

彼女は薬物の影響を受けていると思いますね。

2D: マードック、君がそんなことをしたなんて信じられない。

マードック: お前のためを思ってこそだろ、相棒。あいつはゴミみたいに見える女だった。真面目な話、グレイソン・ペリーかなにかに似てたし。あれはお前の外見を利用してただけだよ。

2D(静かに): …真理だ。

マードック: 見ろ。あいつは陰鬱なブスだった。いとも簡単にお前のディナーをすっぽかしたし。俺に感謝するんだな。なんであれ、舞台上でな…

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ラッセル・ホブス: 眠れる巨人の目覚め ①

ラッセル: 頭の上にふくろがかぶさって来たのが、マードックとの本当に初めての出会いだ。マードックははっきりしない50年代のレコードを探してて、ええと…俺はそれを探しに行った。俺は、ロンドンのソーホーエリアの、ビッグリックブラックレコード屋の一角の奥で働いてた。一瞬彼に背を向けたその時、俺は頭に大袋をかぶせられ店の外に放り出された。自分がコングスタジオにいて、マードック・ニカルスは敵だということがわかるまで、袋は外されなかった。だが、俺に演奏してみせた彼の音楽は、俺をそこに留めるのに十分だった。

アメリカのヒップホップハードマン、ラッセル・ホブスを加えよう。1975年6月3日、ニューヨークはブルックリン生まれのラッセルは、周りの尊敬に値するものによって、性格も言葉遣いもよくきちんと育てられた。2Dがルックス、マードックが頭脳だとしたら、ラッセルはまさに心である。マードックと2Dが音楽に没頭していた頃、ラッセルのやつはすでにミュージシャンであり、そのサウンドの知識は世界中に及んだ。

しかしながら、ラッセル・ホブスの周りにはいつも災難がついて回っていた。

マードック: 俺はこのヒップホップの巨匠ホブス、死んだ友人の霊に取り憑かれているひとりのリズムの王について、聞いてはいた。さあ、どれくらい絞り取れるだろう? そう、全てだ! ヒップホップ、アンデッド、ラップ精神、強制退去、衝撃的なドラマーの、全てを合わせたひとつの巨額な王家の小切手だ。いいや、二度目にラッセル・ホブスについて耳にした時には、俺の中ではもう奴は俺のバンドメンバーだった。例え本人がどう思おうと…

ある夜友人が全員突然走行中の車から撃たれた後、ラッセルは安全のためにイギリスに送られていた。彼は深くゆっくりとした東海岸口調で詳しく話す。

ラッセル: いまだにとても鮮明だ。俺たちの背後に回ってくる車の音。俺と友達はセブンイレブンの外に駐車してて、ひどい雨だった。俺たちは自分たちの仕事が嫌だったんだよ。そのハンヴィー…大きく黒いハンヴィーは、俺たちの車の後ろを這い回ってるようだったんだが…そして俺たちはすぐにその騒ぎに気付いた…

2D: 続けて! それで何が起こったの?

マードックが2Dを見やり、目をぎょろつかせた。2Dはこの話を50~60回聞いており、そのことをマードックは知っている。マードックは重たい電話帳を投げて2Dの後頭部に直撃させた。

マードック: おい! レインマンよぅ! いい加減覚えてこうぜ!

ラッセルにもう一度この回想を繰り返させることは、診療時間を飽き飽きしながら座っているのと同じことだった。

ラッセル: ギャングだった。ひとりを除いた全員が赤い覆面をつけた奴らでトラックはいっぱいだった。そのひとりのフードは黒く、顔は完全に闇に紛れていた。銃身の先に気付いた時には、もうそれは窓を突き破っていた。発砲し、その場を照らしたウージーの炎は夜空を光らせた。俺の友人のデルはあっという間に死んでしまい、他の友人も…俺から離れていた友人全員も死んでしまった。どういうわけか、俺にだけ全く当たらなかったんだ…

2D: 不思議だね。

マードック: お前は、俺たちに起こった多くの不思議なことが、事実だということを知ってるだろうがよ、このまぬけ。

ラッセル: トラックの床に倒れているところから、黒覆面の顔を見ることができたんだが…それは死そのものだった。死神。そのイメージは永遠に俺につきまとうだろう。

マードック: へぇ…すげぇな。

ラッセル: その瞬間が、そいつを目にした初めての瞬間だよ。

マードック: 伝記に残そうぜ、ラス。

2D: え…これ俺たちの伝記だと思ってた…

ラッセル: その時すぐに、死んだ友人の精神…幽霊の全てが、吸い込まれるように俺の体の中に入ってきた。シーツが掃除機に吸い込まれるみたいに。バン! バン! シュゥゥ!! バン! 真っ直ぐ俺の中に。

こうして取り憑かれる過程で、ラッセルの目は永久的に白く変わった。また、ラッセルに、優れた音楽の技術、悪魔の世界と遭遇した後にラッセルが作ってしまったくだんの友人、全ての音楽の最高権力者も、ひとりの男の中にもたらしてしまった。

マードック: で、俺はラスを元に引きずり戻した――

ラッセル: デル。彼は俺の真のソウルメイト、友達、兄弟だった。彼が殺された時、彼の精神を俺の中に取り込んだ。彼は、「クリント・イーストウッド」に現れている、幽霊ラッパーになった。だが俺はいつだって自分勝手な幽霊、悪魔の亡霊達の避難所だった…

マードック: なんていうか、ラッセル、それは多分お前が差し出した「土地」の、空きの大きさのせいだ。

ラッセル: 俺がちょうど…その周波数の振動だと思える、それ以上だと思うんだ。

マードック: なんだと?

ラッセル: 俺は、ザビエル学校という、ニューヨークにある若き成功者のためのプライベートスクールに、威張って通っていたものだが、卒業生の何人かが恐ろしい暴力を受けるという事件の後、教職員の長によってそこから移された。その時の俺は気付いていなかったが、俺はすでに悪魔に乗り移られていて、大きくなってもそのままだった。大学寮でのある夜、明らかに体が2倍にまで大きくなり暴れ続け、子どもを何人かつまみあげ、人形のように放り投げた。学校のホールに血で殴り書きされた「ラッセル・ホブス参上」というサインを見ていなかったら、それが俺だとは信じられなかった。それは間違いなく俺の筆跡だった。

マードックは頭を振っている。

マードック: お前はそういう頭のおかしい奴なんだよ、ホブス、だろ?

ラッセル: 少しは黙ってろよマッヅ、しまいにゃ殴るぞ、ブルックリン式でな。(ひと息ついて)とにかく。俺は学校から追い出されたが、取り憑かれていることと不安で俺は昏睡状態に陥った。俺は、メリン神父が俺の魂から魔を払ってくれるまで、大体4年間も意識がなかった。そうやって俺は今ここにいるんだ。

最後には悪魔は倒され、ラッセルは昏睡状態の4年後にやってきた。あいにく、前の学校は彼を戻らせようとはしなかったが。

ラッセル: そして俺はブルックリン高校へ行くことになり、新しい仲間に出会った。そいつらはストリートミュージシャンやラッパー、DJ、MCだった。俺は急いで多くを学んだ。ヒップホップは俺の命、魂を救った…

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