DOUBLE BASS9番目の曲は、酔わせるブレイクビート・サイケデリックの、精神が不安定になる1曲だ。ラッセルが優れた才能の片鱗を露わにする。
ラッセル: 俺たちがどうやってこの曲に至ったかは、実のところものすごくおもしろい。俺は最高な小さなもの、端に吸着パッドのついた小さなマイクを、タンディという電気屋で買った。これを誰かの頭の横に置いくと、そのひとの考える音を拾って録音するんだ。彼らが想像していることを文字通り音楽に変身させるのさ。サンプリングにしてみればすごいことだ。
マードック: 俺は2Dに言ってやった。「目一杯咳止めシロップをがぶ飲みして2~3人の仲間と遊園地へ行く、1950年代をベースにしたロカビリーのストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーを想像しろ。今ブライアンはリキュールを飲んでいるから途中で具合が悪くなり始めて、その濃くてべたべたする茶色い液体はブライアンにここにはないものを見せようとしている。ブライアンは遊園地と視覚と泡の狂った世界に嵌められた。お前の頭はどんなだ?」ってな。
ラッセル: これが2Dの描いた音だ。俺たちは何も加えたりしちゃいない。デーモン・アルバーンの声以外にはな。休憩のために2Dがどこへ行こうと、俺たちはなにもしちゃいないぜ。
「All of this makes me anxious. At times unbearably so.(この全てが僕を不安にさせる。そう耐えられない程の時間において。)」
2D: 俺の中にはいつも少し「ロカビリー」遊園地があるんだ…真面目な話。父さんはイーストボーンの遊園地で働いてる。だから「ゴースト・トレイン」もまた俺のルーツなんだ。電気ピアノ、アーケード、観覧車、俺の頭はこういったもので溢れてる。アタリっていうゲーム会社のポンていう古いゲームの音についてもなんとなく考えてたよ。
マードック: 少し巻きでいけるか? どれくらいかかるかわかんねぇや。
ROCK THE HOUSEもうひとつのゴムでできた手足のショー、絵に描かれた幽霊のようなデルによる無気力なラップ、正確なスローモーションの曲を打つ歌詞。金管楽器が刺しスネアが打つ巧みで素早いリズムによって裏打ちされ、ゴリラズはもう一度君たち全員に「とにかくそうしろ」と強く願う。
マードック: くじ引きで俺はこの曲を手に入れたんだ。
ラッセル: メインのブレイクはジョン・ダンクワースの「モデスティ・ブレイズ」のご好意により作成された。
マードック: 「好意」だなんて言わないね。実際俺たちは感謝を表して大きな見返りで奴の口を塞がなけりゃならなかったはずだろ。
2D: 「ロック・ザ・ハウス」は本当にCDになんかなるべきじゃなかったし、俺が本当に嫌いなこのアルバムでただひとつのものだよ。俺にはできることがないしまじで。俺はこの曲で、パンパイプの担当で演奏したはずだよ。
マードック: パンパイプ?! これにくそみたいなパンパイプが使われてるなんて誰も言ってなかったぞ。ちょっとこの場を外させてくれ。
ラッセル: 素晴らしい曲だが、2Dのボーカルの存在なくして、「クリント・イーストウッド」の半分の出来かな。
マードック: すまん、ラス、何言ってるかわかんねぇ、友よ。ヨギ・ベアみたいに鳴ってるだけだぜ。「Sheke and Bake, do whatever it takes(上手くやるんだ、何としてでも)」? ここいらにいるお前のお化けみたいな友達のことについてのスクービーを手に入れられなくしてもらうし、お前もと薄々思ってるぜ。
19-2000ゴリラズデビューより2枚目のシングルにふさわしい「19-2000」は、高音と低音と大きなブレイクのヒップ・ポップ・カレッジのようなところをドライブする。
2D: 俺は時計のアラームを切ってキーボードでリフをサンプリングした。それを繋いで変な音にした。詞は…ええと、すごく抽象的な…「Get the cool shoeshine(かっこいい靴磨き欲しい)」。すごく深みがあるけど、すごく薄っぺらくもあるみたいな。
マードック: ふーん。「天才」と「まぬけ」の間のいい線行ってるんじゃねぇか?
2D: ああ、そうだね…うん、そう思うよ。その通りだ。
羽鳥美保が、ティナ・ウェイマスも加えて再びコーラスに登場する。
ラッセル: ダンは元トーキング・ヘッズのメンバー、トム・トム・クラブのティナ・ウェイマスにいくつかのトラックを送り、彼女はそのミックスに自分のボーカルを足した。彼女はCDにそれらを焼いてから送り返して来たんだ。そうしたらダンは楽曲にそれらを落とし込んで、ヌードルと美保のボーカルと合わせた。このブレンドは本当に上手くいったってわけさ。
マードック: しかも、俺たちがこのタイトルに則してるってことも見て取れるだろ? 1998、1999、19-2000。ほらな?
LATIN SIMONEゴリラズのまばゆい生命の輝き、くすぶったキューバの楽曲、ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブのイブラヒム・フェレールの魅力的なボーカルの演出。ゴリラズの音のパレットを全く異なる大地へ連れて行く。
ラッセル: この曲、「ラテン・シモーネ」は、かすかにラテン風で、俺はただブエナ・ヴィスタの音楽とイブラヒムの声の愛の中にいる。俺たちがイブラヒムとコネを持つにあたっては、ワールド・サーキットというレーベルのニック・ゴールドという男を通した。俺は楽曲をニックのレターボックスに入れて、俺たちを助け出してくれないか頼んだ。
とても大きなキャンバスを通してこのアルバムの音が広がる、ラテン様式の手ごたえが加わった。
2D: 俺たちはイブラヒムに詞を絶対書かなかった。イブラヒムは時々、俺の…俺の作った「what's the matter with me?(俺の何が問題なんだ?)」っていうラインの少し感傷的なところに目をつけて、「que pasa contigo?(どうしたんだ?)」に変えちゃったりしたんだ。俺たちはイブラヒムにはまじで好きなようにさせることにした。イブラヒムの描いたメロディは俺の描いたものとはちょっとだけ違ったし、だから異なったものになったんだけど、俺は好きだな。万事いいよね。
ラッセル: 聴いてみればこれは…大変なものだ。2005年に亡くなったと聞いて、とても悲しく思うよ。彼は素晴らしくて、熱い魂を持っていて、彼の純粋さは驚くべきその声の、素晴らしく表現豊かな特性に聴くことができた。彼は自分の声をたっぷりこの曲に注いだし、彼と制作することはとんでもない名誉…俺たちの誰もが決して忘れられない経験だった。魔法がかった魂だ。
STARSHINEゆったりとしたレゲェの楽曲、それに催眠術にかかりそうなビートと潜り込ませたギター・リフ…
マードック: 俺のベースがどれだけいいか聞こえるか? これのために俺は2本指を使わなけりゃならなかったんだ。
2D: 「星の光」。十分な時間をまじでかけられなかったしたくさんの詞もまじで書けなかったから、この制作はまじで楽しんだよ。起きてやっただけ。
マードック: まるで口を開けたら音が飛び出したみたいだったな?
2D: それが俺の覚えていることだよ、うん。
マードックは驚いて飛び上がった。
マードック: 幽霊が俺の帽子を脱がしやがった。
他のメンバーは無視した。
マードック: 本当だって。ここに座ってお前らに色々話してたら幽霊がさっと小突いたんだ。見ろって、床に落ちてるだろ。
ラッセル: 座れよ、マッヅ。インタビューが終わるまでここにいろ。
続行している間、ご立腹のマードックはどう見ても無関心な様子で席に戻る。
SLOW COUNTRY「スロー・カントリー」は、夏風が奏でる物思いにふけった思慮深い音楽に聞こえる、歌のそよ風である。しかし、アップビートの殻のすぐ下で、再び不安な感覚があらわになる。2Dは低く口ずさむ。「Moving out of city/ Better have a second chance/ Kicked a lot of provlems, we kicked a lot of them.../ Can't stand the loneliness...(街を出て/次のチャンスを得た方がいい/問題なんて蹴っ飛ばしてさ、色んなことを蹴っ飛ばしてさ…/孤独には耐えられないんだ…)」
マードック: 元気出せよ、馬鹿野郎。大丈夫だって。
この曲は2Dのフリースタイルなボーカルの風刺とダウンビートなキーボードに分かれている。
マードック: 一体なんだって最後にくそみたいなザ・マペッツの「マナマナ」なんかしやがったんだ? それまでは本当によく行ってたってのに。
2D: 俺は唄ってただけだよ。マイクが入ってるなんて知らなかったんだもん。
M1 A1アルバム最後の曲は、ひとりぼっちの不気味な感覚を引き起こす、ゾンビ映画『死霊のえじき』の不吉な予感と共に始まる。ゴリラズのライブバンドの総力がステレオから爆発する前に、テンションはゆっくりと上がっていき、ギターははらはらしたクレッシェンドに上がっていく。
2D: 俺とラッセルはある午後集まって、俺はラッセルに俺のハマっている山積みの映画を観せてあげた。ボロボロの古いゾンビ映画をこんなにたくさん。俺が音楽に感じるのと同じものが、俺の中に響くような何かがあるんだ、本当にたまにだけどね。唯一魂を意識できる感覚、みたいな。コミュニケーションの難しさって氷の中に閉じ込められたように感じさせる。探して、失くしてそして…狂う。それと、彼らが互いに頭や物を食べちゃったところの血みどろの欠片が俺は好きだなー。
ラッセル: 俺はこの青髪少年が言わんとすることを汲み取って、サンプルを撮った。俺たちはこれと一緒にライブセットを開けたもんだ…これっていうのが、この感覚だ。あんたたちは人生を探している孤独な魂だ。これが、俺たちが何度か使った技だ…
2D: 大げさかもだけど、俺、動きと速さと間合いの感覚を捕まえようとしたんだ。「M1 A1」って戦車、でしょ? ゴリラズが暗喩的にイギリス高速道路に沿って疾走する場所まで。
マードック: 何言ってんだ? 俺が歌詞を書いたんだぞ。ちくしょう!! あと何回だ?! 俺はずっとハワード・ディヴォートの大ファンで、クリスマスにばあちゃんに会いにストークまで車を運転しながらマガジンを聴いてたんだ。高速道路ががらがらだったからロメロの『死霊のえじき』を思い出して、そんで俺はその全部を少しくっつけて、「M1 A1」と一緒にやってきた。がらがらの高速道路はいつも警告して教えてくれる…今にも加えられるゾンビの攻撃を。
ヌードル: 車に隠れて引っ張ってこられた猫がいっぱいいるように聞こえるように、3倍もギターを弾いたよ。それから思いっきり叫んだの。
マードック: ひゅう! 終わったな。以上だ。15曲の純金。
オリジナルのCDのリリースが始まると、アルバムはいくつもの顔をもつ逸品になった。
「10ヶ月で30本近い曲を出した後、ゴリラズはダーク・ポップ・クラシックを届けた。ジャマイカのダブからニューヨークのヒップホップ、キューバのラブソングから南ロンドンのスカムパンクまで散らばる、広範囲な影響力を持つ性的で野性的で魅惑的な、ゴリラズに最初から長くいる演奏者は目・耳・心を開かせるものであり、まさにロックという長い幹線道路の標識だった。ゴリラズは彼らの様々に異なる背景と広範囲な影響力、彼らの多岐にわたる様式と破壊的なもの・近代的なもの・今でも難なくアクセスできる音を作るための、心を動かす才能を混ぜ合わせた。これは起きる時、始める時、終える時、頭の中の恋人と楽しむ時にかける音楽である。マーキュリー賞の受賞が難くないということは、ゴリラズの半分がジョニー・フォリナーという事実からではない。絶対にかっこいい。絶対にいかしている。」
ゴリラズの協力者たちの助けと共に、もともと想定していたものよりもはるかに大きな構造に集結された。ゴリラズデビューというこの巨大でぐらぐらした創作物は、それまでは15階建ての高層ビルになる予定だったが、現在は音による多重次元のガウディハウスとなっている。
2000年6月2日 ゴリラズのアルバムはニューヨークのマスターディスクにてハウィー・ウェインバーグにより作られた。
マードック: クソ程確かに、俺たちは袋の中に赤ん坊がいたことを知っていたさ。
お次は…「ホテル・スターダム」。
マードック: おう! 「俺の部屋を用意しろ、俺はバーにいる」。