人々の欠点に光を当てるという彼の才能を磨くことは、我々の恐れ知らずのマードックに新たな自信を与えた。マードックの次の時代であるティーン時代の多くは、普通はストロングボウ・サイダーをがぶ飲みしエアピストルを窓の外に打ちながらの、盗み、車の盗難・暴走、動物虐待、詐欺、放火など自慢できる大騒動に費やされた。日中のハードな不良活動の後、夕方は仲間達の家を渡り歩いてレコードを聴き、のんびりと過ごした。とりわけ、ブラック・サバスの深く、濃く、甘美な成功に気付いたのはこの場所だった。メタルバンドのザ・ブラミーはマードックにとって、闇を切り裂き先を指し示して輝く、第二の神だった。
マードックは、膿み、腐り、病んだ村の外側の、金色に輝く未来をイメージし始めた。
マードック: ブラック・サバスのベストアルバム『ウィ・ソールド・アワ・ソウル・フォー・ロックンロール』。ああそうだ、あれが俺の頭をまさにひっくり返した。実際、奴らは俺の、古きサタニズム・ゲームに賭ける投資のひとつだった。それらと、アレイスター・クロウリー、アントン・ラヴェイ、すげぇ巧妙なA.C.M.Eの「ドゥ・イット・ユアセルフ」。がらくた市で買った悪魔崇拝道具。だが一番は? そら、リーフレットを手渡してアーンデール・センターをうろつく奴がいた。それで俺は、最初に目にしたものが「地球上の富」の全て、「性的貪欲」なもの、「アルコール過多」になる機会と対になるものだと思った。16歳になり、それは計画を企てている最中の男にとってすごく楽しいことだった。そう、俺がやってみたように、わかるだろ? それは手袋のようにフィットした。
ヘビーメタルと悪魔崇拝は俺の一番の趣味になった。兄弟のハンニバルのテイストはもっとダブとパンクがベースになっていたが、俺は万事没頭した。実際、俺にとってダブレゲェの世界を次第に開いていったのはザ・クラッシュへの熱だった。だが俺の最初の真実の愛はいつだってヘヴィ・メタルだ。愛しく、親しく、甘く、邪悪なメタル。兄弟もそれが好きだったとは全く思わないが。
2度目、3度目とマードックの鼻を折ったのがハンニバル・ニカルスだ。ハンニバルのプレーヤーでディオのアルバム『ウィ・ロック』を聴いたからだった。
マードック: 奴は俺をたくさんのいい音楽にぶち込んだ。奴は今は投獄中だが…あー…タイヤのホイールを盗んだか何かで。
そう遠くかからず、マードックはたったひとつだけの正当な資格―「反社会的人類学国際学士号」を残してサッズウォース校を出された。
マードック: ああ、俺は「余所の文化」の行動パターンやコミュニケーションの方法、文化的習慣を、かなり詳細に学んだ。それからそれを馬鹿にしてやった。俺は完全勝利と共にその試験に合格した。
しかしながら、ストーク・オン・トレント6年制大学のハロウド・ホールズは決して父親を招かなかった。
マードック: まじないと鋭い思考力と音楽熱のコンビネーションは、全て同じ方向性を俺に示した。俺はすぐに、ワインの海へ出航し世界を揺らし転がすミュージシャンのスターとして人生を費やす決意をした。俺は封印を解かれた魔神だった! 頭脳とまじないと自信とカリスマを武器に…止められなかった!
契約に封をし、下の大男と共に計画に取りかかった。俺のさだめを感じるか? やっぱり俺はチャンネルを乗っ取るものを持っていたんだが、それは魔王の小さなエレベーターに乗せても全く傷つけられねぇ。だから俺たちはある取り引きをしに来たんだ。
ある契約をするため、マードックはミドルネームを書類手続きにおいてアルフォンスからファウストに改名した。そして引き換えに悪魔のベース、「エルディアブロ」を手に入れた。
マードック: すばらしい。本当にいい音だ!
それはマードック・ニカルスが成功の杯から飲む前から度々あったため、進路が今やはっきりしているにも関わらず、二者間の契約はいくつかの期間の弁護士の間で明らかに拒否された。マードックは父親の家に住むのに不可欠な家賃を支払うため薄給な仕事を耐え抜いた。
マードック: あー…墓掘人、スープ屋、テレセールス、サンタクロースのバイト、教会の屋根の鉛を盗むこと…
それは実際、仕事ではないのでは…。
マードック: いや、きつい仕事さ。まぁどんな方法にせよ金が必要だったんだ。
どれくらい酷いことをしたんですか?
マードック: そうだな、俺は一度、大事業家のサー・アラン・シュガーに性行為をすることについて考えた。100ポンドは見込めた。だが直前になって、「くそっ もっとうまい方法があるだろ…」と考え直した。その時はまだ奴はただ「アラン」と呼ばれていた。奴はいまだに俺に「サー」と呼ばせようとしてるがな。
本当に?
マードック: ああ。この話は全て本物さ。
その数年間ずっと、マードックは、どこにも行けない、多様なラインナップでたくさんのバンドを作った。それらの中には、悲しいことに、ぼんやりして頭の悪いキーボードとマードックのカラスが絞め殺されたような歌とを合わせることに何の意味もない、酷くヘタクソなニューロマンティックバンド、パチュリー・クラークもあった。彼らは二度と組むことはなかった。
マードック: 何にせよ、そうさ。俺はかねがねいつか世界の王になるってことがわかってたが、それは始めてのバンドでのことじゃなかった。大きな契約だからな。先を読み続けなきゃ。
スターを成功させるための上手く行かない試みは数年間続いた。キッスンメイクアップ、ブールワーカー、クリムゾン・バックドラフト、マトリー・デュード、ザ・バーニング・センセーションズ、ザ・スチューピッド・ネーム・ギャング、デュランゴ95、トゥーズ・ア・クラウド…と、恥のリストは続いて行く。
マードック: 最終的に、俺は時間を無駄にしていたことに気付いた…「豚に真珠」だったのさ。俺の声は真のプロ、スペシャリストのためのものだ。広い聴衆へ向けて、俺の作曲技術の素晴らしい才能を伝えるには、俺はもっと…型にはまったヴォーカルをみつけなけりゃならなかった…
歌うことのできる誰かを。
マードック: そう、その通りだ。現実問題は1997年のチャートがふざけたものだったことだ。それがチャートに上がり人々にヒットしたというなら、そいつらはちゃんとした音楽を知らねぇんだ。俺はトップ40だけでなく、イギリスだけじゃなく、音楽業界だけじゃなく、世界の全てに向けての計画をした。総てだ、いいか? 冗談じゃないぞ、もう少し待ってくれ。この話はもっともっとよくなる、そして物語とセットになるんだ、なぁ!
もしマードックが本当にその夢を実現し、汚く、不快で、腐った、ゴミに満ちた、悪臭放つ肥溜のストーク・オン・トレントから逃げ出したなら、違う段階で基本計画を進めなければならない。それは彼の才能に見合ったバンドを作ることを意味した。
一方、イギリス、クローリー・ニュー・タウンでは、とても、とても優れたシンガーが頭角を現し始めていた…